梓 真悠子

1976年、神奈川県生まれ。女優、タレント、モデル。父は加山雄三氏、母は元女優の松本めぐみさん。慶應義塾大学在学中にスカウトされ、NHK大河ドラマ「毛利元就」でデビュー。大学卒業後に結婚し、2人の男の子の母に。ミセスの憧れの存在として雑誌などで活躍する。また、両親から受け継いだ料理の腕を生かし、オリジナリティあふれるレシピやテーブルセッティングが学べるクッキングサロンを主宰。自身の生活を綴ったブログ「梓真悠子のスタイリッシュサロン」が人気を博している。


 

加山雄三を父にもった影響なのかもしれません。忙しくても、自然と規則正しい時間の過ごし方になるようです。朝食を作り、子どもの送り迎えをして、仕事をこなし、夕食の用意をします。

仕事が立て込んでくると、どうしても料理の時間が削られてしまうのでしょう。けれども私はしっかりと厨房に立ちます。料理研究家のプライドでもありませんし、主婦、母親としての義務感というのとも少し違います。虚心に楽しいんですね。気持ちが安らぎます。睡眠時間は少なくなっても、キッチンに入ることで精神統一ができて、元気になれるようなのです。

父は料理が好きで、私も小学生の頃からよく手伝いをしていました。スープやソースなどの下拵え担当でしたが、隣で包丁をふるう父の様子がとても楽しげでした。中華料理に凝っていたとき、ふわふわのカニ玉あんかけを作ってくれまして。あまりに美味しくて私が声をあげて感激するので、張り切って食卓に並ぶようになりました。

父の当時の忙しさはたいへんなものだったはずなのに、家でゴロゴロしているところなど見たことがありません。父と母が料理を作り、家族で賑やかに食べる。きっと父も、料理を作ることでリフレッシュしていたのではないでしょうか。体を休めるのではなく、エネルギッシュなリフレッシュですね。そんな感じで、私もすっかり料理好きになりました。

私は外食も大好き。料理研究に食べ歩きは欠かせません。家庭で朝食と夕食を用意するので、外食はランチだけだと思われるでしょう? 夜も外食するんですよ。子どもと主人に夕食を作り、一緒に食卓を囲んだあとで、「じゃあ、これから勉強しに出掛けます」って(笑)。遅くまでやっているレストランが多いでしょう。それでも、朝は普通にキッチンに立って食事を作りますよ。

「コジト」はワイン派の私には嬉しいお店。季節感豊かな料理に、ぴったりのワインを合わせてくれます。ご飯の美味しさを再認識させてくれるのが「米福」です。凝った料理はよく食べるので、素材のシンプルな味にほっとします。

母の日に、子どもの通う幼稚園からメッセージカードをもらったんです。「何をしているときのお母さんが一番楽しそうですか?」という質問に、「お料理をしているとき」って書いてありました。なんだか嬉しかったですね。2人とも男の子ですけど、料理はどんどん手伝わせます。餃子作りとか、フレンチトーストとか。うるさく言わずに、間違えてもいいから楽しんで作らせます。火も使わせます。子どもなりに集中している顔を見ていて、ふと思います。ああ、父が施してくれたことを、私も繰り返しているのだな、って。