家族に「治療中止」というつらい選択をさせないために

私が密着取材をしているとき、50代の男性が突然の脳卒中で助かる見込みがなく、その家族が医師から「延命のための治療を行うかどうか」を聞かれている場面があった。その家族は「治療中止」を選んだが、それがどれほどつらい選択かは自分の身に置き換えるとわかる。

撮影=笹井恵里子

家族や周囲の人を苦しめないためにも、「治癒が不可能で回復が難しい状態になった時」、自分の考えが以下の3つのうちどれなのかを親しい人に伝えておきたい。

(1)延命を最も重視した治療
心肺蘇生や気管挿管、集中治療室での治療など、心身に大きなつらさや負担を伴う処置を受けても、できる限り長く生きることを重視した治療を受ける。同時にできる限り症状緩和のための治療やケアを受ける。

(2)心肺蘇生や気管挿管などの心身に大きなつらさや負担を伴う処置までは希望しないが、その上で少しでも長く生きるための治療
一例として体から余分な水を抜く薬や、人工呼吸器ではないが機械で呼吸をサポートするなど。同時にできる限り症状緩和のための治療やケアを受ける。

(3)快適さを重視した治療
治療による延命効果を期待するよりも、できる限り苦痛の緩和や快適な暮らしを大切にした治療を受ける。

ちなみに私は(3)を希望することを家族に伝えている。また、国民健康保険証の裏面にある臓器提供の意思表示は「私は、脳死および心臓が停止した死後のいずれでも、移植のために臓器を提供します」に○をしている。

③「救急患者」にならないように努力する

笹井 恵里子『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)

一般市民が救急医療にできる3つめは、“救急”患者にならないようにすることだ。救命救急センターで働くベテラン看護師がこう言っていた。

「血圧を下げる薬を飲まないで血圧が急激に上がって脳出血を起こしたり、血糖の薬を勝手に減らして高血糖や低血糖になって意識障害で運ばれてきたり。処方された薬の内容を理解する、きちんと服薬する、通院する、それらを行うだけで救急車の搬送って大幅に減ると思うんです」

年を取ったら誰でも病気になり、救急搬送をされる確率が高くなるのは仕方ない。けれども、自分が病気であることを自覚した行動が救命率を上げ、重症率を下げるということを理解したい。