①目の前で人が倒れたら、迷わず手を差し伸べる

まずはグラフを見てほしい。あなたが住む地域は119番通報から救急車が現場に到着し、そして医師につなぐまでのトータルでどれくらいの時間がかかっているだろう。

全国平均が39.3分で、全国ワーストは東京。なんと50分もかかる。今、家族に緊急事態が発生したとして、50分後にようやく病院で治療してもらえるとしたら気が遠くならないだろうか。

そして搬送時間の中でも、「119番通報から救急隊が現場到着までの時間」に注目したい。

救急車が現場に到着する時間が年々遅れている。最新データの全国平均は8.6分で、2007年の7.0分と比べると十年で1.6分も延伸されている。たかが1.6分と思うかもしれないが、この差は大きい。特に心肺停止患者の蘇生チャンスは1分超えるごとにみるみる低下し、10分を超えると絶望的という報告がある。総務省の調査でも、救急隊による心肺蘇生開始までの時間が10分を経過すると、一カ月後の生存率や社会復帰率が低下することがわかっている。

搬送時間も現場到着時間も全国トップクラスの福岡県

ちなみにこちらも東京は全国ワーストで、「絶望的」ラインを上回る10.7分かかっている。一方で「人口1万人あたりの救急出動件数」が東京都とそれほど大差ない福岡県は例年、搬送時間も現場到着時間も全国トップクラスだ。

福岡市消防局救急課の角石登志和さんは「とはいえ7.8分かかっています。救急車の到着は全国的にどんどん遅れていますので、その場に居合わせた方が勇気をもって対応することが大切」と言う。

救急事故の現場に居合わせた人(=バイスタンダー)が、救急車到着までに応急手当てを行うことで救命や症状悪化に貢献できるのだ。

「バイスタンダーが応急手当を行うことで救命の可能性が2倍に保たれることがわかっています。救急車が現場に到着するのは全国平均で8.6分ですが、現場がマンションやビルなどの場合は救急隊が傷病者に接触するまでにさらに時間を要することもあるので、命を守るためにバイスタンダーが速やかに救護の手を差し伸べてほしい」(福岡市消防局の角石さん)