なぜ福岡県は「救命率」がずば抜けて高いのか

このとき正しい応急手当てを取得できる救命講習を受講していると、手を差し伸べやすいという。実は福岡県は搬送時間が早いだけでなく、救命可能な心肺停止患者に対する救命率(1カ月後の生存率)が最も高い。その値は約22%で、全国平均13.5%を大きく上回っている。

福岡県の救命率の高さはどこにあるのか。福岡市消防局によると、同市では「これまでの累計で成人の40%が救命講習を受講している」とのこと。市が根気よく呼びかけているそうだ。

「救命講習をしっかり受けることが周りや自分の命を救うと思います。短いものは90分、通常は3時間コース、24時間3日間のコースを受けると自分が講師(応急手当普及員)になれるものなど、さまざまなものがあります。応急手当普及員も累計5000人を超えました」(福岡市消防局の角石さん)

救命講習はどこの自治体でも必ず行っている。ぜひ一度受講の機会を設けることをお勧めする。

「まず一番最初にやること」は「声をかけること」

さて、冒頭の「目の前に倒れている人がいたら、まず一番最初にやること」は、「声をかけること」である。福岡県中央の筑豊地域で、救命救急センターを有する飯塚病院特任副院長の鮎川勝彦医師が説明する。

飯塚病院特任副院長の鮎川勝彦医師(撮影=笹井恵里子)

「『どうしました?』と軽く肩を叩いて、反応があるかどうかを確かめます。反応がなければ人を呼んで119番通報してもらい、AEDが近くにあれば持ってきてもらう。さらに傷病者の胸とおなかの動きを見て、呼吸をしているかどうか、10秒以内で確認する。呼吸をしていなければ即座に心臓マッサージ(胸骨圧迫)を開始してください」

現在のガイドラインでは「人工呼吸は必ずしも行う必要がない」とされている。したがって人工呼吸の知識がない場合には胸骨圧迫のみを継続すればいい。垂直に体重が加わるように腕をまっすぐ伸ばし、傷病者の胸が約5センチ沈み込む程度に強く速く圧迫を繰り返す。圧迫のテンポは1分間に100~120回。強く、速く、絶え間なく、がポイントだ。

全国各地で一般市民の胸骨圧迫によって「救命」だけでなく「社会復帰」できた例もある。もちろんそれができれば素晴らしいが、救急患者を日本一受け入れている湘南鎌倉総合病院救命救急センター長の山上浩医師はこう話す。

「つらそうな人や倒れている人を見て、何もできなくても速やかに救急要請(119番通報)をすることも大事な手当です」

道端や身近に急患が発生していたら勇気をもって「声をかける」と、心したい。