著作物とは〈物理的な作品〉か〈抽象的な概念〉か

では、【文章】中で「著作物」は、どのように定義されているか?

「段落3」には、「著作物という概念」、「著作権法は、著作物を頑丈な概念として扱う」という記述がある。しかもそれら〈概念としての著作物〉は、「現実の作品」が「物理的」に「消失」あるいは「拡散」してしまっても、「頑丈」に存在するというのである。

同様のことは、「段落4」にも述べられている。なにしろ「著作物」は、それが「破壊」されても「存続」するというのであるから。

要するに【文章】の筆者は、〈著作物=物理的な作品〉というより、〈著作物=抽象的な概念〉と考えているのだ。まさに、〈物質的世界を超越した概念の次元〉である〈イデア〉の世界を想定したプラトンの哲学になぞらえて、「現代のプラトニズム」と比喩するゆえんである。

さて、ではここで、選択肢①~⑤を見てみよう。ここまで分析した【文章】の論理に基づくなら、〈抽象的な概念〉として「著作物」を説明しているものが答えということになるはずだ。

では、各選択肢が〈物理的な作品〉と〈抽象的な概念〉のどちらを説明しているか、確認してみよう。

①実演、レコード、放送及び有線放送に関するすべての文化的所産
物理的な作品

②小説家が執筆した手書きの原稿を活字で印刷した文芸雑誌
物理的な作品

③画家が制作した、消失したり散逸したりしていない美術品
物理的な作品

④作曲家が音楽作品を通じて創作的に表現した思想や感情
抽象的な概念

⑤著作権法ではコントロールできないオリジナルな舞踏や歌唱
物理的な作品

というわけで、【文章】の内容に基づくなら、答えはただひとつ〈抽象的な概念〉を挙げている、選択肢④ということになる。

大学入試センターが設定した「問2」の配点は6点で、正答率は41.9%だった