2021年1月から始まる大学入学共通テスト。その「現代文」では複数の文章や資料の読み取りという形式の出題がある予定だ。しかし予備校講師の小池陽慈氏は、「このままだと受験生を迷わせるだけの、完成度の低い出題となる恐れが高い」と危惧する。その理由とは――。
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大学入学共通テスト「現代文」の見逃せない「欠陥」

現行の大学センター試験に代わって、2020年度入試から開始される大学入学共通テスト(以下、「新テスト」と表記)の現代文において、記述問題の出題やその採点方法などが議論を呼んでいる。僕もこれまで、プレジデントオンラインへの寄稿(「大学入試採点に“学生バイト”は絶対反対だ」「新大学入試の大欠点“自己採点ができない”」)や、共著『どうする? どうなる? これからの「国語」教育』(紅野謙介編、幻戯書房)で、その問題点を指摘してきた。

だが、問題点は「記述問題」だけではない。新テストの国語には、もうひとつ見過ごせない問題点があるのだ。それは予備校業界で「記述問題よりも、むしろこちらのほうがより大きな問題かもしれない」と指摘されるほど深刻なものだ。

まずは、2回にわたり実施された試行調査問題の問題構成を、以下にざっとまとめてみよう。

第1回試行調査問題
第1問:部活動規約、会話文、図表、円グラフ、新聞記事
第2問:評論文、図表、写真
第3問:小説の原案となった物語、その物語を翻案した小説
第2回試行調査問題
第1問:テーマを共有する評論文×2
第2問:ポスター、法律文、評論文、図表
第3問:詩、エッセイ

第1回、2回の共通点は、すべての大問において「複数の文章や資料の読み取り」という形式が採用されていることである(以降は、文章や資料などを、まとめて「テキスト」と呼ぶ)。例えば、第1回の第1問は、「部活動規約」「会話文」「図表」「円グラフ」「新聞記事」という形式の異なるテキストが提示され、受験生はそれらを読み込んだ上で解答する。

この“複数テキストの横断的読解”は、試みとしては興味深い。複数のテキストを関連づけながら読む力は、大学入学後のレポート作成などにおいて要求されるものでもあり、新テストが目指す「思考力」を問うことになるからだ。

けれどもそこには、絶対無視できない「問題」が存在する。どういうことか。実際の試行調査問題を参照しながら、その問題点を指摘していきたい。