2021年1月から始まる「大学入学共通テスト」では、初めて記述式の問題が導入される。その採点をめぐり、柴山昌彦文科相は7月9日の記者会見で「(採点者には)様々な属性の人間が含まれる」として、大学生が採点者になる可能性を否定しなかった。予備校講師の小池陽慈氏は、「新試験では自己採点が難しいため、受験生の志望校選びでの負担が増すだろう」という――。

文科相は、大学生が採点者になる可能性を否定せず

7月4日、NHKが2021年1月からスタートする大学入学共通テストに関して、「文部科学省がアルバイトの大学生の採点者も認める方針である」と報じた。

これに対し、私は「大学入試採点に“学生バイト”は絶対反対だ」という記事をプレジデントオンラインに寄せた(7月7日公開)。学生バイトのリスクの大きさを述べたこの記事に対して、予備校関係者だけでなく、多方面から大きな反響があった。

そして本記事がアップされた直後の7月9日、柴山昌彦文部科学大臣は会見で、大学入学共通テストの採点について、「(採点者には)様々な属性の人間が含まれる」と発言した。会見の内容は、文部科学省のホームページで確認できるが、重要な点について一部を紹介したい。なお、それぞれの発言は文意を損ねない程度に整えている。

ユーチューブ文部科学省公式チャンネル「mextchannel」 の中の「柴山文部科学大臣会見令和元年7月9日」で文科相の全発言を確認できる。

「(採点者には)様々な属性の人間が含まれる」発言の意味

【記者】大学入学共通テストの記述式問題の採点者にアルバイトの大学生も認める方針だということですが、大臣の見解をお願いします。

【大臣】大学入学共通テストの記述式問題の採点業務に関しては、現在、大学入試センターにおいて採点事業者の入札公告中でありまして、採点者の選抜方法等については、契約後、事業者からの提案を踏まえ、センターと事業者とで協議をすることとなっております。この仕様書においては、

●適正な試験等によって質の高い採点者を確保すること
●必要な研修プログラムなどで、採点者の質向上の取り組みをするとともに、1次採点は複数名で独立して行うこと
●複数名の採点結果が異なる場合等には、採点監督者が採点結果の確認や不一致のあった答案の採点などを行い、独立して採点した結果が一致するまで当該答案に対する採点作業を行うこと
●採点作業中に適時、採点結果の品質チェックを行い、その結果を採点作業の改善につなげること

など、採点の正確性を確保するための取組が求められております。文部科学省としては、こうした多層的な組織体制と品質チェックの充実等によって採点の質を確保することが重要だと考えておりまして、個人の属性のみに着目して採点者を採用する方針ではないと考えております。

【記者】個人の属性によってではないということは、大学生も採点者に含まれ得るということですか。