夏休みに子供の足を引っ張る「理系父さん」
毎年夏休みになると、算数の成績がガクッと下がる子がいる。塾での学習量が増え、理解が浅いまま宿題をこなすだけの勉強になってしまっているのが大きな原因だが、その背後で子供の足を引っ張る存在がいる。
理系父さんだ。
わが子の中学受験を応援したいが、日頃は仕事が忙しく、勉強を見てあげることができない。いつも母親に任せきりで申し訳ないという気持ちもある。そこで、夏休みだったら、自分が勉強を教えてあげられると張り切るのだが、それが成績下降を招いてしまうことを本人は知らない。
一般的に中学受験は国語・算数・理科・社会の4教科の総合点で合否が決まる。だが、理社と比べて国算の配点が高いこと、特に算数は一問あたりの配点が大きいことから、中学受験では算数の得点が合否のカギを握ると言われている。ところが、中学受験で求められる算数は、小学校の授業で習う内容よりもはるかに難度が高く、特殊な解法の習得も必要になる。そこで算数に強くなることが合格への近道となり、どの家庭でも算数の勉強に多くの時間を割くことになる。
「禁断の方程式」を教えてしまう
「わが子を助けてあげたい気持ちはあるけれど、私も主人も文系出身なので、見てもさっぱり分からないんです。理系出身のお父さんがいる子がうらやましい」
文系の親の多くはそう口にこぼす。だが、実際は理系父さんが関わることでうまくいかなくなるケースもある。禁断の方程式を教えてしまうからだ。
中学受験の算数は、小学校で習う内容と大きくかけ離れてはいるものの、学習指導要領の範囲を超えることはできない。そのため、数学で使う方程式は原則御法度だ。しかし、それをわかっていない理系父さんは、いつまでも問題が解けないわが子を見て、「なんでそんなまどろっこしい解き方をするのだ? こんなの方程式で解けばいいじゃないか」と、方程式を教えてしまう。
特に地方の名門校出身の父親は、中学受験の経験がないため、その傾向が強い。早く正解を出す上では、その方が効率はいい。だが、受験算数が求めている力は効率ではない。
塾で習った考え方と父親が教えた方程式で頭が混乱する子供。そして、理解が浅いまま、与えられた大量の宿題を終わらせることだけで精一杯になり、知識が定着されないまま、疲労感だけが蓄積される夏休みになる。