理学部的発想にも、工学部的発想にも触れられる

この後、子供の成績は順調に伸びていった。それと共に、理系父さんの「なぜそうなるんですか?」「なぜその方法で解けるんですか?」「その方法は他にどんな問題に使えるんですか?」の質問が急増した。この「なぜそうなるのか?」は、現象の原因を研究する理学部的発想につながり、「どんな問題に使えるのか?」は、現象の利用を研究する工学部的発想につながる。

はじめは、私の理系父さんへの返答を手持ちぶさたに聞いていた子供が、だんだんと興味を持って聞くようになった。この子供は、中学受験算数の学習を通じて、理学部的発想と工学部的発想の両方を感じとることができたのだろう。近年の入試で重視されつつある「試行錯誤する力」とは、実はこの2つの発想を指す。

数学の思考とは大きく異なる中学受験算数。「小学生の子供になぜこんな難しい問題を出すのか?」「なぜこんなまどろっこしい解き方をさせるのか?」など、さまざまな声が聞かれるが、使える道具が少ないからこそ、工夫する力が育つ。

私は、中学受験算数とは工夫する過程で学習の楽しさを味わいながら、将来必要となる頭の使い方を学ぶことができる優れたものだと感じている。あくまでも正しく学習させればだが……。それを伝えていくのが、長年受験算数を指導してきた私の役割だと思っている。

西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。
(構成=石渡真由美 写真=iStock.com)
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