大手の進学塾ではたくさんの宿題が出る。この宿題をこなしているのに、成績が伸びないと悩む親子がいる。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「中学受験で難関校に合格する子は、のびのびとしている。塾から出された宿題を『こなす』という考えは変えたほうがいい」という――。
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「面倒見のいい塾」で伸び悩む子供

中学受験の勉強は、小学校で学習する内容よりもはるかに難しい。算数においては特殊な解法を身に付ける必要があるため、家庭だけで進めるのは大変だ。そのため、ほとんどの子供が、中学受験の勉強に特化した大手進学塾に通うことになる。しかし、ひとくちに大手進学塾といっても、授業の進度や宿題の量、家庭学習のスタンスなど、その中身は異なる。

中学受験塾には、いろいろなタイプがあるが、その中でも面倒見のいい塾として知られているのがA塾だ。A塾の一つの特徴として挙げられるのが、塾の時間割の中に自習時間が組み込まれていることだ。授業で習った記憶がまだ新しいうちに問題を解かせることで、学習の定着を図るというのが塾側の考えのようだ。

A塾の授業はメインで教える講師と、それをバックアップする「チューター」という2人体制が組まれている。授業は17時~21時までで、その後に約1時間の自習時間がある。「自習」とはいうものの、ほぼ強制的に教室に残ることになる。そのため、帰宅が23時を過ぎる子は少なくない。

だが、通っている子供たちの多くは「塾が好き」と言う。メインで教える講師群はトークスキルが高く、おもしろい授業をしてくれるからだ。また親たちからは「面倒見のいい塾」として支持されている。実際、チューターの先生は夜遅くまで学習のフォローをしてくれるし、家庭に電話を入れて、塾での様子を報告するなど、かなり面倒見がいい。

ところが、その評判とは裏腹に、成績が伸び悩んでしまう子がいる。それはなぜか。