大学入試センターの公式見解も文科相と同じ内容

【大臣】採点業務につきましては、適正な試験等によって質の高い採点者を確保するということが仕様書によって求められております。適正な試験等の結果として様々な属性の方が含まれ得るとは思いますけれども、いずれにせよ、その上で多層的な組織体制と品質チェックの充実等によって採点の質が確保されると考えております。

【記者】様々な属性の中には、大学生も含まれるということだと思うんですけれども、大臣としてはそれでよろしいというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

【大臣】先ほど申し上げたとおり、適正な試験等によって、場合によっては学者であってもそうした試験をクリアできないということもあり得ると思いますので、そうではなくてしっかりとした質の高い採点者を確保するということが望ましいと私は考えております。

大臣のこの発言は、大学入学共通テストの記述式問題の採点業務に大学生を雇う可能性を、まったく否定していない。「適正な試験等によって質の高い採点者を確保すること、必要な研修プログラムを行うこと」によって「採点者の質を向上する」ことや、「多層的な組織体制と品質チェックの充実等によって採点の質を確保する」ことを前提に、「個人の属性のみに着目して採点者を採用するといった方針」ではないと明言しているのである。

なお、大学入試センターは7月12日に「NHKの報道について」という表題で、採点業務を委託する民間事業者を公募中として、具体的な採点の方法について、声明の中で下記のポイントを示している。

●今夏以降に、採択された事業者との契約において定めていく
●厳正な審査を行って採点の適性がある採点者を採⽤する
●採点者に対して事前に十分な研修を行う
●複数の視点で組織的・多層的に採点を行う体制を構築する
●採点者の採用不採用の条件については、採点者個⼈の属性にのみ着目することはない

基本的に、先の文科相の発言を踏まえての内容であると判断できる。すなわち、「しかるべき審査や研修、そして万全の採点体制のもとに採点の質を確保する。したがって、採点者個人の属性は問わない。つまりは、大学生が採点者として採用される可能性は否定しない」というのが、文科省や大学入試センターの、現段階での公式見解なのである。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/wnmkm)

大学入学共通テスト「国語」の出題には“欠点”がある

大学受験は、受験生の人生がかかっている。たった1点、2点の差で合否が決まるシビアな世界だ。当然、その採点作業には大きな責任がのしかかる。万が一、“人為的”なミスがあれば、受験生は人生を台なしにされてしまう可能性もある。よって、繰り返すが、大学入試採点に“学生バイト“は絶対反対だ。

大学入学共通テストに関して声を大にして言いたいことがもうひとつある。

筆者は先日の記事内で、大学入学共通テストの「国語」の出題に関するある特徴を述べた。それは記述問題について、「大量の枚数を短時間で正確に採点する」ために、「解答が“一義的”に決まるよう、さまざまな仕掛け」が用意されているということだ。

とりわけその傾向が顕著だったのは、大学入学共通テストの「第1回試行調査問題」(2017年実施)だった。加えて「第2回試行調査問題」(2018年)でも、「第1問/問3」の記述問題では、様々な細かな“条件”が付され、解答があからさまに一定の文言に“誘導”されていた。記述式とはいえ、答えの“自由度”は極めて限定的だ。