あたかも韓国全体が「反日」かのような誇張
結論から言うと、ソウルは平穏で日本料理店には韓国人客があふれ、ビアホールではアサヒビールが飲まれていた。ただ、反日はテレビと新聞の中、国会の中、日本大使館前だけで激しく展開されていた。これは私がソウルの日本大使館に調査員として勤務していた1982年の第一次教科書問題以来、ずっと同じで、日本のマスコミが韓国の政治家の発言とマスコミ論調を紹介し、大使館面の反日パフォーマンスを報じるので、あたかも韓国全体が反日で燃え上がっているかのような誇張が日本に伝わる。
ただし、今回の反日がこれまでと異なるのは、青瓦台(せいがだい、大統領官邸)が先頭に立っておあっていることだ。青瓦台の実力秘書官がSNSなどで連日、反日扇動を行っていることが特異な現象だ。
曹国(チョ・グク)大統領民情首席秘書官(7月26日に交代。法務長官起用説がある)が今回の反日の中心人物だ。彼はSNSで、「親日は利敵で、反日は愛国だ」という過激なメッセージを発信した。民情首席秘書官とは検察、警察、司法など法執行機関を担当する次官級の役職だ。その人物が親日は「利敵」だと明言したことの意味は重い。
韓国は違った国になろうとしている
青瓦台の反日扇動に合わせて、反日パフォーマンスやデモを主導しているのは、やはり親北左派活動家らだ。日本商品のラベルを踏みつけるパフォーマンスを主導したのは、北朝鮮主導の暴力革命を目指しているという理由で朴槿恵(パク・クネ)政権によって解散させられた極左政党・統合進歩党関係者だった。「NO安倍」プラカードをかかげる反日ろうそくデモも、朴槿恵弾劾デモを主導した極左労組などが主導している。
私は、文在寅(ムン・ジェイン)政権になって日韓関係だけが悪くなったとは思っていない。韓国がこれまでの日米韓3カ国同盟、自由民主、市場経済、反共という路線から外れようとしており、それが日韓関係にも反映していると見る。われわれと付き合ってきた韓国とは違う国になろうとしている。
北朝鮮の政権が半島の中で正統性があると考える「主体思想派」(主思派)が南で権力を掌握した。その結果、今までの路線から抜け出ようとしているのだ。