冬季五輪の女子スケートの名シーンを思い出したい
最後に朝日社説は「日韓両政府は頭を冷やす時だ。外交当局の高官協議で打開の模索を急ぐべきである。国交正常化から半世紀以上、隣国間で積み上げた信頼と交流の蓄積を破壊してはならない」と訴える。
「頭を冷やす」は別として、この訴えは正論だ。信頼と交流の蓄積を維持することは重要である。
そこで思い出すのが、昨年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪のスピードスケート女子500メートルだ。あの氷上のシーンである。今年1月29日付の記事「照射事件で“異常行動”を続ける韓国の事情」の最後でも取り上げた。
金メダルを獲得した小平奈緒選手が、多くの観衆が見守るなか、敗れた韓国の李相花(イ・サンファ)選手の肩を抱きかかえながらゆっくりと観衆の前を滑った。
あのとき、韓国メディアは小平選出と李選手のこれまでの友情を詳しく紹介し、抱擁シーンを大きく報道していた。
テレビを見ていて沙鴎一歩も、目頭が熱くなった。日本と韓国の選手がお互いの力を認め合った結果だった。反日感情など皆無だった。
「正当な反撃」と「韓国国民の把握」とのバランスだ
しかし外交は感情では対応できないことがほとんどだ。安倍政権は「目には目を、歯には歯を」と反撃し、産経社説は毅然とした対応を主張する。もちろんこうした行為は外交上、必要だろう。否定するつもりはない。
韓国の内情に詳しい知人のジャーナリストは「日本との関係悪化を憂慮し、『反日をあおる文大統領が韓国を駄目にする』などと文政権を批判する韓国メディアも多い」と話している。
日本人も韓国人も同じ人間である。しかも韓国は同じアジアで、日本の隣国でもある。基本はお互いの心情だと思う。日本側が韓国人の心の内をつかんで理解していけば、きっと韓国もそれなりに応じてくれるはずだ。
外交には正当な反撃に加え、交渉相手国の国民の気持ちを把握する努力がいる。両者のバランスが欠かせない。
繰り返すが、安倍政権が文在寅大統領率いるいまの韓国政権を説き伏せるには、韓国世論に訴えて韓国国民を味方に付けることだ。