有名人の画像を勝手に使用して、あたかもその有名人が商品を薦めているかのように見せる広告がある。そうした「フェイク広告」は、怪しげなサイトだけでなく、新聞社のサイトにも掲載されていた。なぜそんなことが起きるのか――。

※本稿は、NHK取材班『暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

地方新聞の記事に紛れ込んでいたフェイク広告

取材を進めると、フェイク広告がインスタグラムなどのSNSだけではなく、信頼できる情報を配信しているはずのウェブサイトにまで広がっていたことがわかった。日本新聞協会の会員となっている新聞社、通信社、それにテレビ局のニュースサイトを調べたところ、フェイク広告が複数の地方新聞のニュースサイトに掲載されていたのだ。

掲載されていたのは、合わせて12の地方新聞のニュースサイト。少なくとも、2018年12月から2019年1月上旬の間に表示されていることを確認した。

新聞社のニュースサイトには、個別の記事ページの下あたりに、「あわせて読みたい」とか「あなたにオススメ」といった関連記事の紹介欄がある。たとえば、「猛暑で県内の最高気温が記録更新」というニュース記事なら、「あわせて読みたい」の欄には「特産のコメの生育に影響」「熱中症で高齢者の救急搬送が相次ぐ」といった、関連する記事の見出しが並ぶ。それらの見出しと同じフォーマットで広告が配信されているが、そこにフェイク広告が紛れていた。

ダイエットサプリの広告で女優の写真が無断使用

フェイク広告は2種類見つかった。一つは、ダイエットサプリの広告。ある有名な女優がダイエット商品を手に持っているかのような写真と「あの有名な○○(女優の名前)ちゃんもやっていることで有名になりましたよね」といった表現で、その女優がこの商品を使ってダイエットに成功したという説明が書かれていた。

新聞社のサイトには、「アメリカの肥満女子が次々と激痩せに成功!? その方法はなんと……」といった宣伝文句とともに水着姿の女性のバナー写真が掲載されていた。このバナー写真をクリックするとダイエットサプリの広告サイトに飛び、そこに、先の女優の写真が使われていた。目のあたりには、申し訳程度に薄くモザイクがかけられていた。

この写真はもちろんフェイクで、元の写真はこの女優が投稿したインスタグラムの中に見つかった。2年ほど前のもので、その元の写真では手に持っていたのはただのコップ。もちろん、何かの商品を宣伝するような文脈でもなく、日常の一コマを投稿しただけのものだった。念のため、この女優の所属する芸能事務所に連絡すると、画像が無断で使われていたことが確認できた。