アイドルが宣伝しているかのように見える広告
もう一つのフェイク広告は、有名アイドルグループのメンバーが雑誌のインタビューで、とある加圧レギンス(ストッキングに似た肌着)を薦めている、という内容だった。こちらも、地方新聞のニュースサイトの「あなたにオススメの記事」欄に、「2週間で脚痩せが実感できる!」という宣伝文句と、すらりとした脚の女性のバナー写真が掲載されており、クリックするとフェイク広告のサイトが開くようになっていた。
雑誌で薦めていたというのはまったくの虚偽で、元ネタとなった雑誌は3年前に発売された有名女性ファッション誌だった。元の記事では、アイドルグループのメンバーの自己紹介が書かれていた部分が、フェイク広告では商品に差し替えられていた。雑誌の担当者に確認したところ、記事の内容を改変することも、広告宣伝に使うことも、許可していなかった。
続くいたちごっこと見逃す広告主
なぜ、ルールを逸脱してまでフェイク広告を作るのか。
「芸能人や有名人、テレビ番組などを使って権威付ければ確実に売れる」
ネット広告にくわしい業界関係者はみな、同じように説明する。複数の証言を総合すると、次のような事情が見えてきた。
「痩せる」「肌がきれいになる」「薄毛が改善する」などとうたった商品は「コンプレックス系」と呼ばれている。このコンプレックス系の商品は、「店頭やレジなど、人に見られる状況で買うのは恥ずかしい」という心理が働き、誰にも会わずに買えるネット販売が強い。そして、広告の表現一つで売れ行きは大きく変わる。こうした商品は、実際に芸能人とタイアップ契約し、広告に芸能人の名前や写真を使うケースも存在する。そうした商品は実際に売れるという。
しかし、タイアップにはコストがかかる。そこで「どうせバレないだろう」と考える一部の心ないアフィリエイターが、フェイク広告に手を染めている。フェイクであることが発覚して広告の契約が解除されても、会社名などを変更してフェイク広告を作り続けており、いたちごっこが続いている。一部の広告主や広告仲介業者はこうした状況をわかっていながら見逃している。
アフィリエイターに支払われる報酬は、コンプレックス系商品の新規購入1件当たり数千円。SNSにフェイク広告を流す費用は安く、商品や広告が“当たる”まで試行錯誤する。当たれば、儲けは大きいという。この作業を、フェイク広告に関わっていたある業者は、こう表現した。
「当たる広告と当たる商品を、宝探しのように探し回っていく」