「レコメンド」のシステムに紛れ込んでいる

地方新聞のニュースサイトにフェイク広告が配信された原因は、そこで使われていた「レコメンド・ウィジェット」と呼ばれるシステムにあった。

これは、いま読んでいる記事に関連する内容の記事を選ぶとともに、その記事を読んでいる人の性別や年代層をターゲットにして自動的に広告を選び、配信するサービスである。新聞社は、別の会社が作ったそのシステムを、自社のサイトのオススメ欄の作成に導入していた。地方の新聞社が採用しているレコメンド・ウィジェットは複数あるが、フェイク広告が紛れ込んでいたのは、都内に本社がある「S(仮名)」という会社が開発したサービスだった。

私たちの取材に、S社は「一部の代理店・広告主から不適切な広告が出ている可能性があり、弊社としても提供サービスの改善に努めるため、今後の対応を検討中」と回答したが、「一部の代理店」とはどこなのか、どの広告主と契約してこういう事態を招いたのかなどのくわしい説明はなかった。

すべての広告をチェックするのは「正直無理」

このサービスを導入している新聞社は地方紙を中心に約20社あった。フェイク広告の掲載が確認できたのは、このうちの12社だ。12社すべてに取材を申し入れたが、回答があった中で「フェイク広告が自社のニュースサイトに掲載されている」ことを明確に認識できている社は一つもなかった。

ある新聞社の幹部は、「広告の内容は広告配信事業者に任せており、私たちの責任ではない」と主張し、くわしい説明やコメントを避けた。またある新聞社の担当者は、「すべての広告をチェックしようにも配信される数が膨大で、正直無理です。問題のある広告は見つけ次第配信されないように広告の管理画面でブロックしているが、100パーセントは防げない」と回答した。

フェイク広告を掲載していた複数の地方新聞のニュースサイトの部署、広告部門、そして技術部門の担当者や幹部から話を聞くと、共通して見えてくる事情があった。ある地方新聞のニュースサイト責任者は、匿名を条件に次のように明かした。