レコメンドサービスの広告に頼らないとサイトを運営できない

「私たちのニュースサイトは、県内で起きた出来事を全国のより多くの人に発信するため、無料で公開しています。しかし、そのためには収益性を考えないといけないので、サイト内での広告配信が求められます。関連記事を自動的に選ぶレコメンド・ウィジェットは同時に広告まで配信してくれる。こうしたシステムを自社で開発するにはお金も時間も人員も必要ですが、一地方新聞社にはそんなことは到底不可能です。外部の会社が提供してくれるこのサービスはとてもありがたいし、事実上、これに頼らないとやっていけません」

――こうしたレコメンド・ウィジェットを提供する会社は複数ありますが、なぜこの会社のサービスを採用したのでしょうか。

「このサービスはほかの新聞社も使っているので安心できると思い込んでいました。指摘を受けるまでは問題が起きるとは思っていませんでした。広告の内容についても信頼して任せていたのに、このようなことになったのは本当に残念です。こうしたことが起きないよう、先方と協議します」

どの広告の掲載を認めるかは各新聞社に委ねられている

NHK取材班『暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴』(NHK出版新書)

一般社団法人・日本新聞協会は、「新聞広告倫理綱領」の中で「新聞広告は、真実を伝えるものでなければならない」と掲げている。そしてこの趣旨に基づいた「新聞広告掲載基準」では、「虚偽または誤認されるおそれがあるもの」や「氏名、写真、談話および商標、著作物などを無断で使用したもの」を挙げ、これに該当する広告を掲載しない、としている。一方で、どの広告の掲載を認め、どの広告を「アウト」とするのか、個別の判断は各新聞社に委ねられているという。

私たちが新聞社に連絡してから数日後、ニュースサイトに掲載されていた当該のフェイク広告は消えたことが確認できた。取材に応じた地方新聞社の多くは、今回の事態を受けて審査基準をより厳格にするよう広告配信システム会社に申し入れるとともに、ユーザーに安心して利用してもらえるニュースサイト作りに取り組む姿勢を明らかにしている。

NHK取材班
ネット広告市場の急成長の陰で行われる、広告不正の実態を取材するため、プロジェクトチームを結成。クローズアップ現代+「追跡! 脅威の“海賊版”漫画サイト」「追跡! ネット広告の“闇”」「追跡! “フェイク”ネット広告の闇」を放送し、大きな反響を集めた。
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