患者の意思を本当に尊重していたのだろうか

「一般的に、終末期ではない患者の治療を中止して死亡すれば医師は罪に問われる恐れがある。日本透析医学会のガイドラインで治療中止を認めているのは『患者の全身状態が極めて不良』などの場合に限られる」
「昨年8月に亡くなった女性には中止の意思を撤回できる点を医師が説明していなかった。治療を希望して来院した別の患者には透析のつらさを強調し、翻意させたという」
「不安や苦痛で患者の心理は揺れ続けるものだ。知識が豊富な医師が、詳しくない患者に透析をしない選択肢へ誘導していると見られても仕方がないだろう」

公立福生病院は患者の意思を本当に尊重していたのだろうかと、やはり疑いたくなる。毎日社説はさらに主張する。

「都の検査は病院から提供されたカルテなど関係資料の分析にとどまる。患者の家族や医師以外の病院職員からの聞き取りなど、もっと踏み込んだ調査が必要だ。患者が『終末期』と言える状態だったかどうかも精査すべきではないか」

終末期か否かなど踏み込んだ調査を行うべきだが、24人もの患者が死亡していることを考えると、もはや行政指導ではなく、警察や検察の捜査の出番である。毎日社説は続ける。

「人工透析の費用は総額1.6兆円に上り、医療費抑制の課題とされることが多い。終末期になっても患者の意思を確かめずに透析を続ける医療機関が多いのも事実だ」

高齢社会の日本で「終末期」の患者をどう扱うべきか

人工透析だけでなく、他の延命治療にかかる費用も含めて医療費をどう削減していくかは大きな課題である。高齢社会の日本において終末期の患者の治療をどう扱っていくべきなのか。それこそ政治の役目だ。安倍政権には真剣に検討を重ねてほしい。

最後に毎日社説はこう訴える。

「患者の尊厳を守ることを基本に、終末期医療のあり方を冷静に考えるべきだ。福生病院の治療中止はそうした議論に水を差すものである」

公立福生病院の問題をきっかけに真剣に終末期医療の在り方を考えるべきである。

(写真=時事通信フォト)
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