頑なに元号を使い続ける産経新聞の気風

次に産経新聞の社説(主張、4月2日付)。産経新聞は西暦よりも元号を重視し、記事では元号を中心に使ってきた。それだけに今回の社説には熱がこもる。朝日社説と違って大きな1本社説である。

冒頭で「天皇陛下の譲位に伴い、5月1日からの新しい御代(みよ)で用いられる元号が『令和(れいわ)』に決まった」と書く。「譲位」や「御代」などという格調高い言葉使いに、日本の伝統を重んじる産経社説らしさがにじみ出ている。

「元号が漢籍(中国古典)からではなく、国書(日本古典)から引用されたのは初めてであり、歓迎したい」とも評価する。これも中国を批判する産経社説らしい。

ときの権力に迎合する「ジャーナリズム」の体たらく

産経社説は安倍首相の言葉を借りて、こう主張を展開する。

「安倍晋三首相は、新元号に込められた願いについて、『一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたい』と説明した」
「政府には、新元号が公的文書はもちろん、広く社会で用いられるよう努めてもらいたい」
「日本で暮らし、または旅を楽しむ外国人が、格段に増えた時代である。政府は195カ国の政府や国連などの国際機関に『令和』を通知した。国内にいる外国人にも元号を理解し、親しめるよう工夫をこらしてほしい」

この産経社説を書いた論説委員は本気で安倍首相が「国民が花を大きく咲かせることができる日本でありたい」と願っていると考えているのだろうか。もしそうだとしたら、社会の公器である新聞の社説を担当する新聞記者として批判精神が大きく欠如している。ジャーナリズムがときの権力に迎合するようでは情けない。

さらに産経社説は「元号と西暦の換算をしなければならないとして、利便性の観点だけを尺度に西暦への一本化を求めることは、豊かな日本の歴史や文化をかえりみない浅見だろう」とも書くが、朝日社説と反対の主張である。

その朝日社説は「公的機関の文書に元号と西暦の併記を義務づけることも求めたい。日常生活での西暦使用が広がり、公的サービスを利用する外国人はますます増える。時代の変化に合わせて、使い方を改めていくのは当然だろう」と主張していたが、これからは「元号と西暦の併記」だと思う。

(写真=時事通信フォト)
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