自分の理想のために工作していたのではないか

公文書の記録の在り方や情報公開にその矛先を向け、こうも指摘する。

「改元をめぐる政府の記録や情報公開のあり方も問われる」
「公文書を非開示にできる期間は原則30年までだが、平成改元の記録はいまだに公開されておらず、政府の消極姿勢が際立つ。しかも、平成の考案者の記録は残っていないとされる」

そのうえで朝日社説は主張する。

「有識者懇談会の内容を含め、選考過程を丁寧に記録し、しかるべき段階で公開して、歴史の検証に付すべきだ。まずは、平成改元時の資料をできるだけ早く公開してほしい」

平成改元時の資料公開はもちろん急いでほしいが、「令和」改元の資料を公にすることで、安倍首相が自らの理想国家実現のために新元号決定までの一連の流れを自分の理想のために工作していたかが、分かるはずだ。

新元号は「選挙戦の道具」に使われてしまった

朝日社説は最後に訴える。

「『日本人の心情に溶け込み、日本国民の精神的な一体感を支えるもの』。安倍首相は記者会見で自ら首相談話を発表し、元号が用いられることへの理解と協力を求めた。だが、元号への向き合い方は人それぞれであることは言うまでもない」
「もとより改元で社会のありようがただちに変わるものではない。社会をつくり歴史を刻んでいくのは、いまを生きる一人ひとりである」

元号の改元で社会は変わらない。その通りである。

安倍首相は改元によって安倍政権に対する国民の批判をかわし、統一地方選挙など亥年の数多くの選挙に勝っていこうという計算なのだ。いわば元号を選挙戦の道具に使ったのである。

朝日社説にはその辺りまで鋭くかつ具体的に批判してもらいたかった。