橋下徹氏が大阪府知事に就任した2008年時点の大阪は、経済や財政、治安から子供の学力・体力まで、あらゆる指標において「ひどかった」。その大阪を大改革によって“離陸”させたのが、橋下氏をはじめとする松井一郎氏、吉村洋文氏という大阪維新の会のリーダーたち。その流れは大阪ダブル・クロス選挙によって加速するのか、止まるのか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月2日配信)から抜粋記事をお届けします――。
大阪府知事選挙が告示され、第一声を上げる大阪維新の会の吉村洋文氏(左)。右は松井一郎知事=2019年3月21日、大阪市中央区

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僕が激怒したあの状況、ひどかった「10年前の大阪」に戻すな!

いよいよ、大阪ダブル・クロス選挙も残すところ1週間を切った。両陣営が追い込みに入る。

今の松井さんの姿や吉村さんの姿、そして大阪維新の会のメンバーの姿をメディアを通じて見て、ほんと色々思い出す。

今から約10年前に僕が大阪府知事に立候補した時、ほんと大阪はひどかった。そのときの自民党から共産党までの既存の政党は何をやっていたのか。

府政、市政で失敗して莫大な税金の無駄遣いをやっても誰も責任を取らない。府の役人、市の役人の給与もボーナスも退職金もそのままで、カットすると言っても雀の涙ほど。議員たちも全く責任を取らない。議員たちは高額な給与に特別な手当てに政務調査費という経費を懐に入れ、効果が見えない海外視察に明け暮れる。そんな議員の姿を見てか、役人たちも、民間よりもはるかに恵まれた勤務待遇をそのまま享受し、天下りもやりたい放題。知事、市長を応援する各種団体には莫大な補助金がほぼ無条件にばらまかれる。

地下鉄もバスも公務員意識丸出しでサービス業の意識もなく、市長選挙では自分たちの身分・処遇を守るために、見返りを期待できる市長候補の選挙応援に明け暮れる。そのくせ、地下鉄のトイレも汚いままで、売店は暗く運賃も高い。バスは重複する路線が多く、客ではなく空気を運んで運転手の仕事だけを確保。公立の中学校に給食はなく、小中学校にエアコンも配備されていない。学力調査テストをやれば全国で最下位。体力調査テストも最下位。それでも教育委員会は、学力だけが全てじゃない、大阪の子供たちは人間力があると言い放つ。教育政策には税金が投入されないのに、高齢者向けの地下鉄・バスの無料パスには年間約100億円の税金が投入される。税金で建てた建物が乱立し、府民市民が訪れないのに、そこに働く人の給与だけは税金で出ていく。

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こんなひどい大阪なのに、それでも知事、市長を必死に応援する各種団体には多額の補助金がばらまかれ、その人たちだけが満足している。これが10年前の大阪だ!

僕は、こんな10年前の大阪が嫌だった。引っ越そうと思えばいつでも東京に引っ越すこともできたし、自分の生活のことだけを考えれば、嫌な大阪に納税だけすれば、あとは楽に暮らせていけた。生活に何の不自由もなかったし、そんなに世間から批判・誹謗・中傷を受けるような立場でもなかった。

それでもこの大阪を何とかしたい。子供たち、孫たちにもう少しましな大阪を残したい。そういう思いで、とりあえずその時の生活を全て横に置き、政治に人生を賭けた。僕のやってきたことは100%完璧ではないし、問題もあっただろう。僕はそんな完璧な人間ではない。それでも前述の大阪の課題を解決するために、絶対に逃げず、絶対に手は抜かず、100%完璧な解ではないかもしれないが、脳みそに汗をかきながらそれなりの解を出して前に進めてきたつもりだ。先送りは絶対にしなかった。だから猛反発も受けた。自分の命だけでなく、妻や子供の命まで狙われるようなこともあった。

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