投票まで1カ月を切りいよいよ白熱する大阪ダブル・クロス選挙。大阪都構想を推進する大阪維新の会に対して、自民・公明などの対立勢力は橋下府政の立役者だった小西禎一元副知事を擁立。小西氏の行動は一部で「裏切り者」と揶揄されたが、橋下徹氏は「素晴らしい生き様」と受け止める。決戦を前に都構想の「生みの親」は何を思うか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月19日配信)から抜粋記事をお届けします――。

考え方が違っても公務員として完璧に仕事をやり遂げてくれた

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/kouji okafuji)

大阪ダブル選挙が盛り上がってきた。大阪維新の会は、府知事候補として前大阪市長の吉村洋文氏を、市長候補として前大阪府知事の松井一郎氏をクロス擁立。対する敵方は、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、それに組合組織の連合までががっちりとタッグを組んで、府知事候補として元大阪府副知事の小西禎一氏を、市長候補として元大阪市議会議員の柳本顕氏を擁立した。共産党までこの自民党候補を支援するらしい。

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自民党から共産党までの既存の政党がタッグを組んだ敵方は、真っ先に、2015年5月17日の住民投票によって大阪都構想は否決されたので、大阪都構想の議論はもはや終了したということを強調する。インテリたちにもこの意見が多いよね。

この意見は、住民投票以後の大阪での重大な政治プロセスを完全に見落としている。

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2015年5月17日の住民投票で大阪都構想は否決となった。しかしその後、都構想反対派が提唱した府と市が話し合う大阪会議を設置したが、それが全く機能しなかった。大阪会議では議題すら決めることができず、同年8月から現在に至るまで会議は開かれたことがない。つまり大阪都構想の反対派がずっと言っている「府と市が話し合えばいい」という主張がただの空論であったことが証明されたんだ。

そもそも小西さんは大阪府副知事として、大阪市副市長と話をまとめることができなかった懸案事項がたくさんある。府と市の職員の間で対立することが、僕の時代から今に至るまで山ほどある。係長レベルでまとめることができなかったものが、課長に上がり、課長でダメだったものが部局長に上がり、そこでダメだったものが副知事・副市長に上がる。それでもダメだったものが知事・市長に上がってくる。

今、府と市が一体となって万博の誘致や外国人観光客の集客、大阪の鉄道・高速道路インフラ整備や「うめきた」などの大規模開発、さらには防潮堤などの大規模な災害対策といった、様々な大きな実績を上げて大阪の経済指標が軒並み右肩上がりになっていることは周知の事実だが、これは、松井さんと吉村さんが不眠不休で副知事・副市長レベルでもまとめることができなかったものを何とかまとめているからだ。

松井さんと吉村さんと食事をするときでも、彼らはずっと府と市の懸案事項を調整している。これが今の大阪府と大阪市の実態だ。

小西さんは副知事経験者で、府と市の話し合いでまとめることができなかったものを自らたくさん経験したにもかかわらず、今大阪都構想に反対するために「府と市が話し合えばいい」と言うのはごまかしだ。