大阪都構想は100%完璧なものではない。都構想をやったからといってすぐにバラ色の大阪になるわけではない。問題点をあげればいくつも出てくるかもしれない。しかし、今の大阪府と市の体制のように知事・市長が不眠不休で府と市の間を取りまとめるというのは、今後ますます時代の流れが速くなり、状況に応じた大阪全体の意思決定をやらなければいけないときに、大阪都構想の問題点と比べて、比べ物にならないくらい大問題なんだ。

つまり大阪都構想よりも現在の大阪府・市の体制の方が問題点は山ほどあり非常にまずい制度。今は大阪都構想に焦点が当たっているので、都構想の問題点ばかりが取り上げられ、現在の府・市の体制の問題点は全く取り上げられないが、本来は都構想と現在の府・市の体制を比較して、どちらが優位か、どちらがましか、を判断すべきなんだ。

知事、市長を経験すればこれはすぐに分かる。本来副知事でも分かること。都構想のように大阪府と市が組織として一体化して、しかるべき役職で必ず見解をまとめることができる組織の方が、現在の府・市の体制よりもはるかにましである。もちろん都になり府・市が組織的に一体となっても知事のところにまで上がってくる懸案事項はあるだろう。しかしその量は、現在の府・市の体制よりもはるかに少なくなる。知事・市長の本来の仕事は、内部の調整役ではない。それは副知事・副市長以下でやることだ。

知事の仕事は大阪のリーダーたる仕事だ。府・市の調整役から解放し、大阪のリーダーたる仕事に集中させるためにも、府と市を組織的に一体化する大阪都構想が必要なんだ。

都構想反対派が唱えた大阪会議が全くダメだった。だから大阪都構想の再挑戦を訴えて2015年11月に松井さんと吉村さんがダブル選に挑み、当選した。この流れからすれば、松井さん、吉村さん、そして大阪維新の会が大阪都構想に再挑戦するのは、民主国家の政治家として「義務」である。

ちなみに京都大学の藤井聡氏は、「大阪都構想になれば大阪市民の税金が吸い上げられ、大阪市の周辺市町村に使われる」という、いかにも閉ざされた大学内で生きている学者バカの批判をしている。

大阪府職員として約40年間勤め上げ、副知事にもなったスーパー公務員の小西さんがはっきりと言っている。「大阪都構想は大阪市内に行政のエネルギーが集中してしまう」と。そうなんだ、大阪都構想は大阪の都心部をさらに強力に発展させ、それを大阪全体に広げていく構想なんだ。

藤井も税金使って自由時間を与えられてるんだから、もう少し現実の政治行政をしっかり勉強しろよな。

(略)

小西さんのこの仕事ぶりを評価して、僕は小西さんを府庁最高幹部である総務部長に抜擢した。幹部内の人事会議では時期尚早という声が多かったが、しっかり仕事をやってくれたので僕は決定した。

こんな小西さんであるが、小西さんは基本的に僕の考え方には反対のところが多かったと思う。ここまで書いたものは、スムーズに事が運んだものの一部であって、府の仕事はこの何百倍、何千倍とある。

だから、小西さんとはぶつかった仕事もたくさんある。最も激しくぶつかったのは、職員基本条例を制定するときだ。この条例は職員の人事評価を厳格化することが柱だが、小西さんはこれに納得がいかなかったようだ。僕の案は、相対評価の導入といって5段階評価のうち、一定の割合で無理やり下位評価を付けるもの。小西さんはきちんと仕事をやっている職員に無理矢理下位評価を付けるのはおかしいという主張だった。僕は小西さんが反撃する機会を与え、この職員基本条例についての批判を許した。小西さんは総務部の総力をあげて職員基本条例潰しにかかった。メディアも職員基本条例を批判した。僕は、このような対立状況を作りながら、大阪市長に転じる選挙(松井さんが最初に大阪府知事に立候補した選挙)において、この職員基本条例を選挙にさらし、そして選挙で勝利したことをもって条例制定を断行した。小西さんも、選挙結果が出た以上従った。

小西さんは公務員に誇りを持っている。公のために、一生懸命まじめに仕事をやっているじゃないか、と。だから公務員を徹底批判する僕に我慢がならない部分が相当あっただろう。