交渉では「対立する主張を足して2で割る」という解決策がとられがちだが、より創造的なアプローチをとれば、論争中の価値の半分以上を双方が手にすることができる。

2000年7月、アメリカ証券取引委員会(SEC)委員長(当時)のアーサー・レビットは、監査人の独立性の問題に関する聴聞会を開いた。SECの会計スタッフや多くの学者(私もその一人だった)が、監査人と顧客企業の密接なつながりは利害相反を招き、アメリカの金融市場を危うくするおそれがあると考えて、監査人がクライアントにサービスを「クロスセリング」(抱き合わせ販売)したり、クライアント企業の職に就いたりすることを禁止するなど、新たに厳しい基準を盛り込むべきだと主張した。

これらの改革案は、監査業界の「ビッグ5」による強い反対にあった。なんらかの行動をとらなければと認識していたSECは、有意義な改革を推し進めるかわりに妥協する道を選んだ。監査法人に、独立性の問題に関わる取引関係を開示するよう義務づけるとともに、この問題を本当に解決するには小幅すぎて役に立たないさまざまな手直しを行ったのだ。