02年に成立したサーベインズ・オックスレイ法(米国企業改革法)は、一部コンサルティング・サービスの売り込みに限度を設け、個々の監査人にローテーションを義務づけ(同一企業の監査を連続して5年以上行ってはならない。しかし、監査法人自体にはこうした制約はない)、上級監査人が顧客企業で職に就くことを制限した(低レベルの専門職にはこうした制限はない)。

妥協によるこの解決策はおそらく効果がないだろう。よりよい解決策は、さまざまな案の要素を薄めることではなく、理にかなった強力なアイデアについて議論することだったはずだ。

妥協する前に自問すべきこと

社会的ヒュリスティックスはすぐれた働きをし、われわれの社会的な付き合いがよりスムーズに運ぶようにしてくれる。小さな決定の場合には、そのまま妥協すればよい。

しかし、あなたの組織が重要な決定や戦略をめぐって交渉している場合には、妥協するという分別を疑ってかかり、より慎重に、思慮深く、深い洞察をもって事を運ぶよう心がけねばならない。

重大な交渉に直面したときは、以下のことを自問してみよう。

●議題はどのようなものであるべきか。
  ●妥協しか手がないというような、両極の意見が出てくる可能性はあるか。
  ●妥協することで、創造的なトレードオフによるパイの拡大を犠牲にすることになりはしないか。
  ●理にかなった複数の案のどれを選ぶべきかという厄介な論争を避けるために妥協しようとしてはいないか。

リーダーにはたいてい、組織内での議論の方向性を決める機会がある。妥協にともなう危険を組織内の人間に示し、よいアイデアが十分に議論されるようにもっていくことができる。具体的には、相手の意見を尊重する、ということは不十分な折衷案で妥協しようとすることではなく、相手の考えをよく聞いて十分に検討することだと広く認識される環境をつくればよい。

政治のレベルでは、「超党派的」という言葉は、社会に価値をもたらす変革を求めて自分のバイアスのかかった見方を捨てる、責任ある協調的な政治家の行動を指すものと、一般に考えられている。真の超党派的決定が行われたときは、市民はそうした変革を支持するべきだ。だが超党派的という言葉は、どんな合意でもいいから合意に達したいと思っている人々にとって、安易な妥協への近道にもなりうるのだ。

(翻訳=ディプロマット)