「子どもを産まなかったほうが問題」が本音ではないか

キーマンは麻生氏と書いたが、2月6日付の朝日新聞がこんな社説を掲載している。

朝日社説は皮肉を込めて「発言を撤回し、陳謝したが、むしろこれが、偽らざる本音ではないのか」と書き始める。偽らざる本音とは、だれの何を指しているのか。

麻生氏の「年を取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違い。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」という発言を指す。麻生氏は3日の地元、福岡県芦屋町での国政報告会で少子高齢化に絡んでこの発言をした。しかし4日の衆院予算委員会で野党から「不妊治療を行い、つらい思いをしている人もいる。極めて感度の低い、不適切な発言だ」と批判され、発言を撤回した。

麻生氏は2014年にも同様の発言をして、やはり批判を受け、釈明している。麻生氏は懲りない性格なのだ。確信犯と言われても仕方がない。共産党の小池晃書記長は「麻生太郎さんの辞書には『反省』という言葉はない」と批判していたが、まさしく猿でもできる反省が全くできないのだから、「財務相としての適格性を疑わざるを得ない」(小池氏)と批判されて当然である。

一連の発言については、プレジデントオンライン編集部が「ウケ狙いで弱者を嗤う"失言大魔王"麻生氏」という記事(2月8日付)を出している。是非、一読してほしい。

安倍首相が憎い朝日は、自民党も嫌う

「子どもを産むか産まないかは、個人の自由な選択によるもので、政治家が口をはさむべきではない。加えて、麻生氏の発言は、子どもを持てない人への配慮を欠き、少子化の責任を個人に転嫁しようとするものだ。看過できない」

朝日社説は麻生氏を糾弾し、さらに自民党をも批判する。

「非正規雇用が増え、低賃金や将来不安から、結婚や出産をためらう人たちがいる。子育てをしながら働ける環境も十分ではない。少子化の危機が叫ばれながら、抜本的な対策を怠ってきたのは、長年政権の座にあった自民党ではないか」

朝日社説が安倍政権を嫌っているのは分かっていたが、自民党をも毛嫌いするようになったようだ。

ただ沙鴎一歩の目には、安倍政権嫌いが高じるあまり、本来分けて論じるべき対象の与党自民党までを毛嫌いしているように見える。これでは坊主憎ければ袈裟まで憎いという構図だ。

朝日社説は「個人の生き方を支援するというよりも、国力の維持のために出産を奨励する。自民党の政治家からはむしろ、戦前の『産めよ殖やせよ』を思わせる発言が後を絶たない」とも指摘し、過去の自民党議員らの問題発言をいくつか取り上げたあと、「安倍政権は『全世代型の社会保障』を掲げ、子育て支援にも力を入れるというが、一連の発言をみれば、人権と多様性を尊重し、子どもを産み育てやすい社会を本気で築こうとしているのか疑わしい」と訴える。