もちろん、国力維持のためだけに子供を産むことを求めるのは問題だが、深刻な少子化を解決できる妙案が安倍政権にないから無理もない。だから「産めよ殖やせよ」という落とし穴にはまってしまうのだ。

ここは朝日社説が安倍政権に代わって政策を示すべきではないだろうか。

不正調査問題の解明には及び腰と言わざるを得ない

話を毎月勤労統計の問題に戻そう。

2月5日付の朝日社説はここぞとばかり、冒頭から手厳しく批判する。

「政策決定の基礎となる統計に対する信頼が大きく揺らいでいる。政権与党は口では再発防止を誓うが、前提となる厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査問題の解明には、及び腰と言わざるを得ない。これでは行政への信頼回復はおぼつかない」

見出しも「統計不正解明 政権与党の本気を疑う」である。

この朝日社説では手始めに「与党は、厚労省の大西康之・前政策統括官(局長級)ら、野党が求める関係者の参考人招致を拒否した」と指摘する。

そのうえで主張する。

「政策について責任をもって説明するなら現職である必要もあろうが、目的は過去の経緯をつまびらかにすることである」

朝日社説の成果かどうかは分からないが、その後、大西氏の参考人招致は2月8日の衆院予算委員会などで実施される。

新聞の読者は「調査報道」を期待している

朝日社説は次に厚労省の特別監察委員会を槍玉に挙げる。

「厚労省の特別監察委員会がわずか1週間でまとめた報告は、その後、第三者性が疑われ、再検証を余儀なくされている。誰が検証を急がせたのか、この間の経緯も焦点だ」
「予算委には、監察委の委員長を務める樋口美雄労働政策研究・研修機構理事長が出席したが、野党の質問に『独立行政法人の理事長として招致された。答弁は差し控えたい』と繰り返した。監察委の委員長として改めて証言を求める必要がある」

当然、だれがなぜ検証を急がせたのかについての解明は必要だし、拒む監査委の委員長に証言を強いることも重要だろう。ただ、朝日新聞自らが取材力を駆使した調査報道によって解明する努力も怠ってはならない。新聞の読者はそこに期待しているからだ。