アベノミクスに成果があったのか、なかったのか
その勢いに乗せられ、朝日社説を2月5日付から9日付まで4本も取り上げてしまった。最後は2月9日付の読売新聞の社説を取り上げてみよう。
読売社説はその後半部で次のように解説している。
「政府は18年1年間の毎月勤労統計を発表した。賃金の伸びに物価変動の影響を加味した実質賃金は、前年比0・2%増だった。東京都で行われていた不適切な抽出調査の数値を補正している」
「野党は、調査対象の事業所を入れ替えなければ、実質賃金はマイナスのはずだ、と主張し、共通事業所に絞った調査結果を公表するよう要求している」
「取りようによって統計は様々な見方ができるだろう。経済の実態を客観的に把握し、冷静な政策論戦を心がける必要がある」
要はアベノミクスに成果があったのか、それともなかったのかだ。実質賃金がマイナスでなく、本当に伸びているのか。野党の言い分が正しいのか。野党の求める共通事業所に絞った調査だと結果はどうなるのか。
「不正調査」と書かずに「不適切調査」とする読売らしさ
疑問が次々と湧いてくる。そこを読売社説は「取りようによって……」と逃げてしまう。新聞の顔である社説である以上、きちんと解説して説明してほしいと思う。
読売社説は中盤で「勤労統計の調査・検証は、厚労省の特別監察委員会が引き続き行い、新たに問題が発覚した賃金構造基本統計の検証は、総務省が担うことになった」と書き、その後で主張する。
「なぜ不適切な調査が長年続いたのか。隠蔽はあったのか。政府は態勢を整え、過去の経緯や背景を解明した上で、再発防止策を講じねばならない」
この主張にはうなずける。
しかし読売社説は、朝日社説のように「不正調査」とは書かずに「不適切調査」と書く。その辺りに「安倍政権擁護の新聞だ」と批判される読売らしさがにじみ出ている。
(写真=時事通信フォト)