10万部ヒットのケーキレシピ
料理本業界で数多くのヒット作を手がけ、注目を集める編集者がいる。実用書の老舗出版社「主婦と生活社」の料理編集・編集長の小田真一さんだ。
2006年に当時100円ショップの人気商品だった「スキレット」(小型フライパン)を使ったレシピ『ジュワッと! 100スキCOOKING』(みなくちなほこ)は複数のテレビ番組で取り上げられ、09年にはブームになりつつあったケーク・サレ(おかずケーキ)も扱った『パウンド型ひとつで作るたくさんのケーク』(若山曜子)は発売10年で12刷のロングセラーになるなど、時流を読んだ料理本をヒットさせている。
15年に刊行した『魔法のケーキ』(荻田尚子)も、版を重ねて現在では9刷10万部を超えた。発売直後からネットでも話題となり、「レシピ本大賞 in JAPAN 2016お菓子部門」で大賞を受賞。ふわふわのスポンジ、濃厚なクリーム、弾力あるフラン(牛乳や卵などをタルト生地に流して焼いたもの)という3層が折り重なったケーキを、1つの生地を焼くだけで作れるという手軽さと目新しさで、多くの人の興味を引いた。多くの類似本が後追いで出版されたのも、ヒットの証しといえるだろう。
フランスのアマゾンをパトロール
手がけた書籍の中には著者である料理研究家からの持ち込み企画もあるが、小田さんのアイデアの源泉はフランスのレシピ本だ。フランスのアマゾン(Amazon.fr)を月に数回“パトロール”し、気になる本を買っては翻訳アプリを使って読んでいる。
「大学時代に第二外国語でフランス語の基本的ルールを学んでいたことも助けにはなっていますが、レシピは材料さえわかれば、どういう工程かはたいだい想像がつくんです」(小田さん)
前述の『魔法のケーキ』も、フランスで人気のケーキ「ガトーマジック(魔法のケーキ)」をアレンジしたレシピ集だ。フランスの料理本からアイデアを得て、それを元に日本人に好まれるようなレシピを著者である料理研究家が作っていく。この黄金の方程式により、ヒット作を世に送り出してきた。