総合エンタテインメント企業エイベックスの社食では、アイドルやタレントたちが「アルバイト」として働いている。芸能活動に専念しなくていいのだろうか。なぜそんなことを始めたのか。エイベックスに聞いた――。
取材当日、アルバイトしていた「#劇団4ドル50セント」の國森桜さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

新社屋で社食導入と同時にスタート

多くの人気アーティストを抱え、マネジメント業務を行うエイベックス。同社ではいま、駆け出しの所属タレントを社員食堂でアルバイト雇用する試みを行っているという。なぜそんな取り組みを始めたのか。

エイベックスでの“タレントのバイト雇用”がはじまったのは、東京・南青山に新社屋がオープンした2017年12月から。最上階に社員食堂「THE CANTEEN」が設けられ、そのなかにある売店兼コーヒースタンド「POP IN」で若手タレントが働いている。社員食堂の導入自体、エイベックスでは初の試みだったという。

「新社屋建設にあたって社食の計画を立てるなかで、『“街の食堂のおばちゃん”みたいな名物スタッフがいれば、社員も毎日来たくなるよね』という話をしていました。そこで考えたのが、デビューから間もないタレントやアーティストにアルバイトをしてもらうことでした」(エイベックス株式会社 人事総務本部 総務グループ ゼネラルマネージャー・村山智之氏)

「アルバイトの内容を把握しておきたい」

社食バイトの仕組みには「タレント側、会社側の双方にメリットがある」と考えていたという。

「デビューしたてのタレントはまだ本業での稼ぎが少なく、アルバイトをしたい人が多いです。一方で会社側としては、アルバイト自体はOKでも、その内容はきちんと把握しておきたい。現実には、不規則なスケジュールの芸能活動と両立できるアルバイトを見つけるのは簡単ではないため、社内で働いてもらえれば我々も安心ができる。希望者に登録してもらい、バイトに入れるときに入ってもらう形になりました」(村山氏)

多くのアーティストやアイドルが本業だけでは食べられない状況は、今や広く知られた事実だろう。「ならば目の届く範囲で別の仕事をしてもらおう」という考えが、社食バイト導入の背景にはあるわけだ。