マツキヨが筋肉質になって反転攻勢へ
長年、ドラッグストアチェーンの首位を保っていたマツモトキヨシホールディングスが、売上高4位に陥落している。2017年3月期決算では、ウエルシアホールディングスに首位を明け渡す。さらに18年同期は5588億円で前年比4.4%と増収は確保したものの、大手3グループの後塵を拝した。
この背景にあるのは、ここ2、3年の競合他社による積極的なM&Aである。ドラッグストア業界は店舗数1.9万、市場規模が約6.8兆円と拡大するなか、ウエルシアは丸大サクラヰ薬局や一本堂を買収。2位のツルハホールディングスは杏林堂薬局をグループに収めた。こうした動きは買い手側の売り上げ規模を一気に拡大させ、結果的に業界地図が塗り替わったといっていい。
しかし、マツキヨにしても混戦の谷間に沈んだわけではない。実は14年に創業家出身の松本清雄氏がホールディングスの社長に就任。以来、売上高よりも収益力強化に軸足を移していた。店舗網のスクラップ&ビルド、無料通話アプリ「LINE」を利用した販売・顧客データの分析、グループ会社との情報システム統合による商品管理を進めた。
そうした地道な経営努力が奏功し、同社は東京五輪へ向けて加速しているインバウンド対策やプライベートブランド(PB)の刷新にも力を入れている。ボリュームの大きい中国人観光客を取り込むために新業態の空港内店舗の出店を加速。彼らの爆買いの対象である化粧品や大衆薬などのPB商品をメーカーと協力しながら充実させつつある。
もちろん、事業の成長にも意欲を見せる。17年秋の中間決算説明会で松本社長は「これからは規模拡大にも意識を向ける」と話しており、一時は中断していたM&Aにしても、買収効果が見込まれる案件が出れば食指を動かすだろう。いまはタイミングを待っている状況だ。
(構成=岡村繁雄 写真=iStock.com)