自分の「理想の睡眠」を知るために

一方で、「睡眠に正解はない」というのも、眠りの専門家である西野氏と裵氏の共通する認識だ。

「8時間睡眠がいい、90分の倍数寝るといい、さまざまな意見はありますが、それらはあくまで平均的な話。100人いれば100通りの基礎体力や生活環境があります。約90分周期といわれるレム睡眠とノンレム睡眠も、実際には120分まで個人差があり、マニュアル通りにはいきません。ナポレオンのように3~4時間睡眠のショートスリーパーもいれば、8時間睡眠が必要な人もいる。まずは自分の理想の睡眠時間を知ることです」(裵氏)

自分の睡眠時間が最適かどうか、「睡眠効率」の計算式でわかるという。

たとえばベッドで8時間横になっていたが、実際に眠れたのは6時間だった場合、「6時間」÷「8時間」×100=75となり、「睡眠効率」は75%となる。

大人の場合は100%を目指す必要はないという。横になってすぐに爆睡できるのは子どもくらいなものだからだ。大人の合格ラインは85%。横になり35分で入眠、目覚めて35分で起床できれば、まずまずという。

次に裵氏が勧めるのは、3日間~1週間の「睡眠ログ」を記録すること。「レコーディングダイエット」同様、自らの睡眠パターンを可視化し、「睡眠効率」を上げるのが目的だ。

手順は簡単。メモ用紙に「日付」と「入眠時間」「起床時間」を記し、「睡眠時間」と「睡眠効率」を割り出す。と同時に「覚醒時の爽快度」や、「日中のパフォーマンス」の状態も〇△×で記しておこう。

すると意外なことが見えてくる。自分はショートスリーパーだと思っていた人が、案外翌日あくびが多く、仕事のミスが多いこともある。反対に寝すぎて体調が悪い日もあるだろう。何時間寝れば、翌日の体調も良く、仕事のパフォーマンスも上々なのか理解しよう。

忙しすぎてどうしても寝られない人は……

ただ、どうしても繁忙期で帰宅が終電になったり、翌日の資料作成で徹夜になったりすることもある。遅番や夜勤など、睡眠を自らコントロールできない職種もあるだろう。そんな緊急時にも応用できるお勧めな方法があるという。

「私自身、普段から実践しているのが昼寝です(笑)。もともと午後2~4時はどうしても眠気が訪れる時間帯で、だからこそ国民的にシエスタ(昼寝)が習慣化している国もあるほど。日本ではいまだ『オフィスで昼寝なんて不謹慎』という考えが多いですが、疲れた体と眠たい頭でダラダラと仕事するよりずっと効率的です。どうしても周囲の目がはばかられる場合はトイレで20分間昼寝することもお勧めします」(裵氏)

ただ30分を過ぎると、脳は本格的な熟睡モードに切り替わるため注意が必要だ。そのほか、カフェインはその血中濃度が薄れるタイミングの午前9時、午前12時、午後3時あたりで摂取すること、夕食は寝る3時間前までに済ますこと、深夜残業時は分食で対応すること、飲み会では酒と同量のチェイサー(水)を飲むことなど、日頃の気配りが睡眠の質に大きく影響してくるという。