「やはりジャケットは着ましょう」。ビジネスマナーに詳しい美月あきこ氏は提案する。

夏はアロハシャツ勤務の群馬県旧伊香保町役場(現・渋川市伊香保総合支所)。14年前、米ハワイ郡との姉妹都市提携が契機。(PANA=写真)

夏はアロハシャツ勤務の群馬県旧伊香保町役場(現・渋川市伊香保総合支所)。14年前、米ハワイ郡との姉妹都市提携が契機。(PANA=写真)

環境省はこれまで、室温28℃や上着なしなどを推奨する「クールビズ」を実施してきた。今年は夏場の電力不足対策のため「スーパークールビズ」に改め、6月から10月まで実施することを5月に発表。これにより、ポロシャツやアロハシャツ、スニーカーまでが職場で認められるという。

軽装推進の流れは、ネクタイ業界などの反発はあるものの、電力節約のためにはやむをえないだろう。エアコンの設定温度を上げる施設が増加することも予想され、年々増加する熱中症を予防する手段としても必要だ。しかし、冒頭の意見にもあるように、服装は礼儀や文化に関わるものだけに、一朝一夕に変えるのは難しい。すでに半袖シャツ勤務OKの会社も多く、あえてアロハなどを認める意味も見出しにくい。職種による違いもある。難しいのが、営業やサービス業など、客相手の人々だ。「営業マンは、『他の企業の営業担当者はどうなのか』を気にする」(美月氏)。

つまり、軽装にするかどうかは、経済学でいう「囚人のジレンマ」。営業マンなどは、競合他社の抜け駆けを考えると我慢せざるをえない。この問題を解決しないかぎり、クールビズは、それを最も必要とする人々にとって虚しい掛け声に終わるだろう。目指すべきは、クールビズの「カジュアル化」ではなく、一般化だ。「真夏にスーツで汗だくなんて、相手に失礼」……たとえばそんな「常識」が普及する時代は来るのだろうか。

(PANA=写真)