東日本大震災の影響による電力不足をカバーするものの一つとして期待されているのがIPP(Independent Power Producer)である。

JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)にある売電専用の火力発電所(PANA=写真)

JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)にある売電専用の火力発電所(PANA=写真)

IPPとは独立系発電事業者と訳される。たとえば、製鉄業や製紙業などの一般事業者が工場内で操業している自前の火力発電所などを使って、電力会社へ電力の卸供給を行う場合などを指す(なお、同様のケースでも自由化された範囲で一般需要家に売電する事業者はPPSと呼ばれる)。

欧米では日本に先行してIPPが導入されている。「米国の2010年のIPPによる発電電力量は1兆5110億kWh。欧州でも電力の自由化が積極的に認められ、国家間の電力の輸出入も活発に行われている」と経済産業研究所(RIETI)上席研究員の吉田泰彦氏は話す。

日本では1995年にIPPの参入が認められた。だが、欧米と違い、日本では既存の電力会社の送電線を借りる必要があるなど障壁が高く、現在まで限定的な参入にとどまっている。

しかし、震災以降、従来電力を供給しているIPPやPPSだけでなく、休止している企業内発電所の再稼働に対して電力会社からの要請が始まっている。

自社の火力発電所を持ち、普段から東京電力に電力を供給しているJFEスチールは、通常は平日の日中のみ稼働させている自家発電設備を、震災以降24時間フル稼働させた。ほかにも多くのIPPやPPSが今回の電力供給に寄与している。この未曽有の電力供給不足により、電力自由化が一気に進むかもしれない。

(PANA=写真)