ベンチャー買収で、成長し続ける5大テック企業
――かつては自前主義だった日本の大企業も、近年新技術を求めて、スタートアップへの投資を積極的に行うようになりました。シリコンバレーにCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の拠点を置く企業も増えています。この流れをどのように見ていますか。
大企業がベンチャーと組むのは、歴史の必然です。米国の株式時価総額ランキングトップ10のうち、アップル、アルファベット(グーグル)、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトと、5社は45年前にはなかった企業です。では、これらの会社はどうやって成長してきたのか。それはスタートアップの買収です。たとえばユーチューブはグーグルが買って大きくなった。つまりテック系のベンチャーがスタートアップを買うことで成長を遂げてきたわけです。
この動きは、ベンチャーだけのものではありません。たとえば米国の製造業でシンボル的な存在であるGMは、27歳の若者がつくった自動運転の会社を約1000億円で買いました。また、ユニリーバも、ひげ剃りのEコマースの会社を約1000億円で買った。テック系ベンチャーのやり方を見て、アメリカやヨーロッパの既存の大企業もやり方を変えたのです。
同じことは日本企業でも起きています。変革のスピードがゆっくりなのでなかなか目立ちませんでしたが、ここにきてようやくシリコンバレー進出の動きが活発になってきたと感じています。
――日本のCVCのシリコンバレー進出が一種のブームになっている印象もあります。今後もブームは続くでしょうか。
残念ながら2018年後半から19年にかけて撤退するCVCが相次ぐでしょう。ベンチャーへの投資は波があります。2001年にネットバブルの崩壊があって、逆に08年のリーマンショックではシリコンバレーからもさっと資金が引きました。直近でいうとピークは15年で、ネットバブル以降で最大の投資額を記録しました。いまはその過熱感からは減速気味ですが、日本のCVCはちょうどそのタイミングでシリコンバレーにやってきた。成果が出ず、「無駄な投資はやめよう」と見直しするところが増えるのではないでしょうか。
――いま進出、加速するのは得策ではない?
ベンチャーが失速したからといって、ネットで買い物をしていた人たちが百貨店に戻ることは考えにくい。遅かれ早かれ変化は起きるのですから、時期が悪くてもやり続けるべきです。もともとベンチャー投資は失敗のほうが多い世界。投資を長いゲームとしてとらえて、失敗を重ねつつもレッスンとして学ぶ企業が最後には成功するはずです。