大企業トップは「インスタ」を使っているか

――成功の条件を満たす会社と、そうでない会社はどこが違うのでしょうか。

スクラムベンチャーズ 創業者兼ゼネラルパートナー 宮田拓弥氏

トップ次第でしょう。CVCを成功させたければ、10億~50億円の投資ではダメ。企業規模にもよりますが、トヨタのように100億~1000億円の予算はほしいところです。このレベルの変革は、トップの決断が必要になります。

残念ながら、現時点でその決断ができるトップは多くありません。日本の大企業は足元の業績が悪くないので、危機感が薄いのです。ガラケーがスマホに代わってシャープの業績が急降下したように、いま業績のいい会社も5~10年後には滑り落ちるおそれがある。トップが危機感を持っていれば、もっと本気で取り組むのではないかと思っています。

――パラダイムシフトが起きていることはみなさん理解しているはずです。それなのに、どうして危機感を持てないのでしょうか。

新しいサービスを自分で使っていないというのが大きいかもしれません。アメリカのトップ10に入っているサービスを使った経験があるかどうかを大企業の経営者に聞いてみたら、せいぜいグーグルで検索して、iPhoneを使っている程度ではないでしょうか。おそらくインスタグラムのアカウントはないし、アマゾンのAWSにいたっては存在すら知らないかもしれない。それではパラダイムシフトが起きていることをリアルに感じられない。

――シリコンバレーのスタートアップから見て、日本のCVCはどのように映っていますか。

基本的には魅力的な相手だと思っていますよ。ただ、日米でビジネスのロジックやカルチャーがあまりに違うため、一緒に仕事はしづらいとも考えています。たとえば米国だと初回のミーティングは電話会議。移動のコストがかかるから、意味のあるときしか会いません。一方、日本は顔合わせでも1時間のアポを取って実際に訪問します。そうした作法の違いがわかっていないと、シリコンバレーの起業家たちからは煙たがられてしまう。CVC成功の条件として外部人材の活用をあげましたが、とくにシリコンバレーの作法を心得ている外国人の登用は必須でしょう。