では、どうすればムダ遣いを防げるのか。答えはシンプルで、「脳が最高の状態」のときに買い物をするようにする、ということです。特に大事な脳番地は、理解系と思考系です。

モノのよしあしや要不要は理解系が分析し、「買うべきかどうか」は思考系が最終判断します。思考系は欲求を抑える力を持つ前頭葉に位置しますので、ここが機能すれば衝動的な行動にブレーキをかけることができます。なお思考系は記憶系と連動し、過去の記憶を思い起こしながら思考を深めるため、記憶系も重要な脳番地です。

ですから、まずは睡眠不足の状態で買い物をしないこと、夕方以降の遅い時間帯での買い物も避けましょう。そのうえでムダ遣いしそうになったら、3分ほどそのあたりを歩いてみてください。歩くという行為は脳番地全体を刺激するので、脳がいわば「脳トレ」をした状態になります。麻痺していた思考系や理解系の脳番地の覚醒も上がるので、冷静な判断ができるようになります。そのとき、1度お店から出るとより効果的です。

使用する脳番地を意識的に切り替えることも有効です。脳というのは同じところだけを使っていると疲労します。そうすると違う脳番地を使いたくなるのです。買い物もいろいろな脳番地を刺激する行為なので、脳が疲れると衝動買いをしたくなるわけです。

ですので、商品から目を離して外の風景を眺めてみたり、連れの人と話してみたり、様々な方法を駆使して違う刺激を脳に与えればいいのです。それだけでも、脳番地が切り替わって、もう1度商品を見たときにはまた違う感想を抱くと思います。

ほかに気を付けてほしいのは、「スマホ依存」です。スマートフォン(スマホ)は、小さい画面をじっと見続けることになるので、眼球運動がほとんど起きません。一番簡単な脳番地の切り替えは眼球を動かすことなのですが、それが起きないので脳番地が切り替わらない。結果として、衝動的にポチッとクリックしてものを買ってしまう。目に入った商品をすぐ買えるスマホは、脳番地から考えてもムダ遣いの温床なのです。

▼衝動買いを抑えるその場アクション8
(1)一回店から出る
(2)3分間歩く
(3)午前中に買い物をする
(4)スマホでネットショッピングの場合は、1度スマホの画面から目をそらす
(5)過去に失敗した買い物を思い出す
(6)代用できるものを考える
(7)代わりに何を捨てるかを考える
(8)財布に入れた親や子の写真を見る
※加藤氏への取材をもとに編集部作成
加藤俊徳(かとう・としのり)
加藤プラチナクリニック院長
脳内科医・医学博士。昭和大学客員教授。1995~2001年、米ミネソタ大学で脳画像の研究に従事。13年、MRI脳画像診断と脳トレ治療のクリニックを開設。脳の個性の鑑定も行う。
(構成=衣谷 康 撮影=向井 渉)
【関連記事】
「高級な服」を着る人が緊張しにくい理由
60代の後悔"不要品は捨てればよかった"
"毎月10万円"がないと絶対に老後破綻する
年金70歳へ繰り下げると81歳で得をする
"お金は汚い"という洗脳を受けた子の末路