ムダ遣いをしてしまう、行動がのろい、片づけられない……。そんな苦手を克服するにはどうすればいいのか。今回、9つのテーマに応じて、各界のプロにアドバイスをもとめた。第3回は「人前で緊張しやすい」について――。(第3回、全9回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年7月16日号)の掲載記事を再編集したものです。

アガり対策をすれば、失敗も怖くない

初めての体験に緊張するのは自然な反応だ。例えば、未知の森に立ち入るとしよう。何かあったとき、すぐに反応して逃げ出せるように、人の体は体温や心拍数を上げて準備する。そのように、太古から人類の体内に刻み込まれているのだ。

写真=iStock.com/DNY59

さらに、人間の感情は、砂山にたらされた水のようなところがある。最初はどの道をたどって流れるかわからないが、1度水が流れると、2度目以降も同じ道筋を流れる。同様に、初めて人前でスピーチをしたときに緊張すると、2回目以降のスピーチでも緊張してしまう。

しかし、「緊張する」と「興奮する」は、心拍数が上がって体が震えるという同じ生理現象。本人の解釈が違うだけだ。だから、ドキドキしているのは、「緊張しているから」ではなく「ワクワクして興奮しているから」という、ポジティブなラベルに貼りかえるとよい。

また、緊張の克服には、慣れが効果的だ。ただ、必ずしも実体験を積む必要はない。脳は、実体験と想像の区別がつかないからだ。例えば、スピーチを行う場合、台本を作り、何度も練習してイメージトレーニングをすれば、実体験を重ねるのと同じ効果がある。私も人前で講演することが多いが、台本を作り何度も練習する。予期せぬ質問をされたり、パソコンの調子が悪くてプレゼン資料が使えなかったりという失敗するケースもイメージする。

高い服を着るのも効果がある。人間は、身に着けるものも含めて自己という認識を持つので、安い服を着ていると、自分がつまらない人間のように感じられておどおどしてしまう。一方、高級なものを身に着ければ、それに見合う人間になろうという意識が強められ、堂々とふるまうことができるようになるのだ。