香りの効果もあなどれない。嗅覚が脳に与える影響は生理反応なので非常に強い。ローズマリーやラベンダーなどの香りをお守りにしみこませておき、舞台に上がる前や、スピーチ中に動揺してしまったときなどに香りを嗅ぐと、一発で気分を落ち着かせることができる。

そしてスピーチが始まったら、最前列にいる誰か1人だけに向けて話すとよい。人は大勢から見つめられると、脅威を感じて緊張してしまう。まずは誰か1人に向かって話し出し、少し落ち着いてきたらその両脇にいる人も含めた3人に向かって話す。さらに緊張が解けてきたら、会場全体にまでスピーチを聞かせる相手を広げていく。もし緊張が解けなければ、最初から最後まで最前列の1人に向けて話せばいい。

それでも、もしスピーチ中に何か失敗してしまったら……。失敗を脳内で実況中継すると、パニックに陥らず、落ち着いて対処するのに役立つ。幽体離脱したつもりで自分の状況を観察し、「焦っているようです。また時計に目をやっています」など、情景を頭の中で言葉にしてみる。自分を客観視すると、冷静になることができる。

▼人前で緊張しなくなる6つの対策
「緊張は自然な現象。事前に対策を立て繰り返し実践し、慣れるのみ!」
(1)緊張ではなく興奮と自分に言い聞かせる
(2)台本を作り、イメトレする
(3)高い服を着る
(4)“香り”をお守りにしみこませて嗅ぐ
(5)最前列の1人に向けて話す
(6)失敗を実況中継する
※内藤氏への取材をもとに編集部作成
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
立正大学客員教授。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。『人前で緊張しない人はウラで「ズルいこと」やっていた』など、心理学を応用したビジネススキルに関する著書多数。
(構成=大井明子 写真=iStock.com)
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