貯金
年収1000万の2割が貯金ゼロ

40代後半、50代は逃げ場がない

サラリーマンの年収が下がり続ける中で、政府は低所得者の支援を手厚くしている。代わりに厳しくなっているのが年収1000万円クラスだ。

「実際に年収1000万円前後の世帯の家計相談を受けても、決して豊かな状況とは言えませんね」(藤川氏)

高所得者層は税金の負担が増える。なかでも影響が大きいのが「給与所得控除」の引き下げ。会社員の場合、所得税を計算する際に自営業の必要経費のように、無条件で給与所得控除を差し引くことができる。

控除額は年収の増加につれ上がるが、13年からは年収1500万円で頭打ち。その制限が16年からは年収1200万円、さらに17年から年収1000万円まで引き下げられた。所得税だけでなく住民税の負担も増すことになる。

手当なども、もらえないことが多い。高校の授業料を無償化する「高等学校就学支援金」は、年収910万円程度以上の世帯は対象外となる。

「東京都は私立高校の授業料を給付する方針ですが、これも年収760万円以上は対象になりません」(同)

現在、1000万円クラスの年収を確保している層は、40代後半から50代が多い。彼らは会社にまだ年功序列が残っている間に就職し、給与も右肩上がりで増えてきた世代だ。

収入が高い分、それに見合った支出をする習慣がついているわけだ。とくに住宅ローンや子どもの教育費は固定費となり、収入が下がっても簡単には減らすことはできない。結果、年収1000万円以上にもかかわらず貯蓄がまったくない世帯が約2割に達する。

40代後半から50代は「梯子」を外されつつある

「こういう人は根底から生活を見直さなければダメ」

そう断言するのは、経済ジャーナリストの荻原氏だ。

「年代に関係なく、いざというときのために最低100万円の貯蓄は必要です」(荻原氏)

理想は年収分だという。しかし、40代後半から50代の厳しさは、今後さらに増す可能性が高い。

「バブル崩壊後に社会人になった不況世代が40代になっており、会社の中心を担うようになっています。その世代の逆襲が始まっているのです」(同)

彼らは、上の世代が高い給料をもらっていることに不満を持ってきた。いよいよ自分たちが会社で実権を握るようになり、上の世代の給料カットやボーナスカットを始めているという。

1000万円超の年収を確保し、一見勝ち組に見える40代後半から50代は、会社からも社会からも梯子を外されつつあり、逃げ場がなくなっている。