保険
年収別「入るといい保険、いらない保険」

高年収・低貯蓄は貯蓄型もアリ

保険は、死亡や病気、ケガなどの際の経済的なリスクに備えるもの。ある程度の貯蓄があれば、それほど高額な保険に加入する必要はない。

「現実は、貯蓄が高い人ほど保険に加入したがるものなのです」(藤川氏)

藤川氏は、年収を横軸に貯蓄残高を縦軸にして4グループに分けると、保険の必要性を考えやすいという。順に見ていきたい。

まず、年収が高く貯蓄が多い世帯は、あまり保険を必要としない。

「低金利のいま加入しても貯蓄性は高くないが、ポートフォリオの1つとして貯蓄性のある保険ならあり」(同)

低解約返戻金型終身保険や個人年金保険、外貨建て保険などが候補になる。

年収が高く貯蓄が少ない世帯は、高額な死亡保障が必要。ただし保険料負担は家計を圧迫するので、掛け捨てタイプで保険料の安い収入保障保険を準備するのがベター。医療保障は、多少保険料が高くなるが生涯保障の続く終身医療保険がいい。また、これまで貯蓄ができなかったことを考えると、低解約返戻金型終身保険で保障を確保し、強制的に貯蓄をする方法もある。

年収が少なくても貯蓄が多い世帯は、必要な死亡保障額があまり高額にならない。もともと生活費が少ないため、リスクが発生したときにもそれほど多額のお金を必要としないからだ。医療保障も最低限でいいだろう。

子供2人なら2000万円の保障を確保しておく

年収が低く貯蓄が少ない世帯には保障が必要だが、保険料負担が厳しいので死亡保障なら収入保障保険、医療なら掛け金の安い共済などを使うのが現実的だ。では、どの程度の保障額を目安にすればいいのか。

「保険で最も備えるべきは子どもの教育です」(荻原氏)

仮に会社員の夫が亡くなり妻と2人の子どもが残されたような場合には、毎月15万円程度の遺族年金を受け取れる。妻がパートに出て少し稼げば、家族3人が食べていける収入にはなる。足りないのは子どもの教育費だ。子ども1人にかかる教育費は1000万円と言われる時代、2人なら2000万円の保障を確保しておく必要がある。

そのため、子どもが独立し社会人になったら、保険の見直しをするのがいいという。死亡保障はほとんど必要なくなるから解約してもいいが、「昔加入した『お宝保険』などはそのまま保有する手もある」(同)。

お宝保険とは、加入者が支払った保険料を保険会社が運用する利率である「予定利率」が高い保険だ。1993年以前に加入した貯蓄性の高い終身保険などが該当する。

武元康明
ヘッドハンター
サーチファーム・ジャパン会長。半蔵門パートナーズ社長。日系、外資系企業を経て、19年の人材サーチキャリアを持つ。近著に『会社の壁を超えて評価される条件』など。
 

荻原博子
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書に『荻原博子のハッピー老後』など。
 

藤川 太
ファイナンシャルプランナー
家計の見直し相談センター代表。家計のやりくりをはじめ、保険、不動産、有価証券などを含め、15年以上にわたり累計2万世帯を超える家計の見直しを行う。
 
(撮影=五十川 満、加藤ゆき 写真=iStock.com)
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