こうした少子化対策にフランスは対GDP比で2.5~4%、スウェーデンも3.5%以上の予算をかけている。それぐらい使わないと出生率は反転しないのだが、日本の少子化対策費用は対GDP比で1.3%程度にすぎない。つまり、そこまで切羽詰まって考えていないわけで、もっと少子化対策に気合を入れるべきだろう。
さらに言えば、戸籍制度が少子化対策の足を引っ張っている。フランスやスウェーデンは約40年前に戸籍制度を廃止して、事実婚を認めている。両国とも生まれている子供の半数以上が婚外子だ。しかし婚外子が差別を受けることは一切ない。生まれてきた子供は、社会全体で育てるというコンセンサスがあるのだ。
今どき、戸籍制度が残っているのは日本と中国ぐらいで、デンマークの出生証明書には父親の名前を書く欄さえない。日本は戸籍制度があるために「籍には入れられないから中絶するしかない」というケースが生じる。堕胎数が出生数より多いという推計もあるぐらいだ。大体、皇居や富士山の頂上に本籍を置いても許されるぐらいいい加減な制度である。戸籍制度の廃止と親が誰であるかを問わずに子供を市民として大切に育てる制度が確立されれば、効果的な少子化対策になるはずだ。
(構成=小川 剛 撮影=市来朋久 写真=時事通信フォト)