ホルムズ海峡封鎖で石油が来なくなる?

5月に米トランプ政権は2015年に主要6カ国(米英仏中露の国連常任理事国+独)とイランによって結ばれた核合意からの一方的な離脱を表明した。この核合意はイランが核開発の大幅な制限を受け入れる代わりに、欧米の経済制裁を解除するというものだ。これをトランプ大統領は弾道ミサイルの開発が制限されていないことなどを理由に「現在の合意内容ではイランの核開発を阻止できない」として離脱を宣言した。査察役のIAEA(国際原子力機関)はイランが核合意を順守しているとの報告書をまとめているし、他の当事国も合意継続を訴えてアメリカの一方的な合意破棄を批判している。だがトランプ大統領はまったくお構いなし。イランへの経済制裁の一部を再開する大統領令に署名して、「史上最強の制裁を科す」と言明した。

イラン核合意離脱と対イラン経済制裁再開を発表するトランプ大統領(5月8日)。(時事通信フォト=写真)

アメリカのイラン制裁は90日(18年8月6日)、180日(18年11月4日)という2段階の猶予期間が設けられている。第1段階はすでに発動して、イランによる米ドルの購入・取得、金などの貴金属や鉄鋼、アルミニウム、石炭などの取引が制裁対象になった。外国企業が旅客機や部品を輸出したり、イランの自動車産業に関わったりすることも禁じられて、これを破った外国企業も制裁対象とされる。第2段階の18年11月4日以降は、いよいよイランの輸出収入の8割以上を占める石油関連の取引に対する制裁が始まる。このデッドラインに向けてアメリカとイランの対立は緊張度を高めるだろう。イラン産原油の輸入停止を呼びかけるアメリカに対して、イランはホルムズ海峡の封鎖をほのめかしている。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の大動脈であり、日本が輸入する原油の7~8割はホルムズ海峡を通過する。

イラン産原油の輸入ができなくなった場合、サウジアラビアやクウェートが肩代わりすると言っているが、サウジの原油もクウェートの原油も、同じく依存度の高いアラブ首長国連邦の原油やカタールのLNG(液化天然ガス)もすべてホルムズ海峡を通ってくる。イラン産原油を輸入すればペナルティーが科せられるし、アメリカの理不尽な要求に日本は同調せざるをえない。しかし禁輸が広がって原油が輸出できなくなったイランがホルムズ海峡を封鎖すれば、オイルショックの再来もありうる。ホルムズ海峡の封鎖をアメリカが軍事力で阻止しようとすればイランとの本格的な戦争に発展しかねないわけで、情勢は予断を許さない。