AIやロボットに代替させても、人手が足りない

総務省が2018年7月に発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、2018年1月1日現在の日本の総人口は約1億2520万人で、9年連続の減少になった。日本は世界に先駆けて完全なる人口減少社会に突入した。

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位推計)によれば、日本の総人口は30年に1億1662万人、48年には1億人を割って9913万人になる。人口減少社会の最大の問題は働き手がいなくなることだ。25年には約800万人の団塊の世代が75歳を迎えて後期高齢者となり、国民の4人に1人が後期高齢者、国民の3人に1人が65歳以上という超高齢化社会に突入する。

医療費や介護費用などの社会保障費が膨れ上がる一方で、社会保障の担い手である労働力人口は減っていく。25年には日本の人口は700万人減って、15歳から64歳の生産年齢人口は約7000万人まで落ち込む(現状は約7400万人)。

外国人労働者受け入れ拡大について発言する安倍晋三首相(2018年7月24日)。(時事通信フォト=写真)

東京オリンピック・パラリンピックというお祭りが終われば、この「2025年問題」はすぐそこである。女性やシニア世代の就労を促進したり、一人ひとりの労働者の生産性を高めたり、AIやロボットに仕事を代替させるなど、労働力不足を補う方策は各方面で進められている。しかし、いずれも進行する人口減少社会がもたらす深刻な人手不足を解消する決め手にはならない。

厚生労働省の試算ではAIの進展によって30年までに161万人の就業者が減少するが、労働力人口の減少はそれを上回るために失業者は増加せず、逆に64万人の労働力が不足するという。国内で行われている生産活動の中心となる生産年齢人口が減少するということはGDPの減少、すなわち国家の衰退を意味する。年間30万~40万人が減っていくこの国の衰退に歯止めをかける秘策はない。対策は人口を増やすことだ。

しかし現状の少子化対策が功を奏して出生率が多少上向いたとしても、人口減のスピードが緩むだけで、働き手は確実に減っていく。人口減少社会が進行する中で、今の国力を維持していくためには、やはり中長期的な視野に立って「移民政策」に取り組むしかないのだ。