「仲が良い」というより、馬鹿にされている

これまで安倍晋三首相は「プーチン大統領との関係は良好だ」と自慢していた。しかし9月10日の日露首脳会談を見ていると、本当だろうかと疑いたくなる。北方領土問題を巡り、ロシア側にこれまでの主張を曲げる様子がみられないからだ。

しかも安倍首相が予定通りにウラジオストクに到着したにもかかわらず、プーチン氏は2時間40分も遅刻して現れた。その間、安倍首相はひたすら待ち続けた。「仲が良い」というより、馬鹿にされている。

もっともプーチン氏は「遅刻常習者」として世界中に知られている。これまでの安倍首相との会談でも、何度も遅刻してきた。被害者は安倍首相だけではない。日本以外の世界各国の首脳との会談でもよく遅刻している。

2018年9月12日、ロシア・ウラジオストクでの東方経済フォーラムの全体会合で話す(左から)安倍晋三首相、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(写真=時事通信フォト)

むしろプーチン氏に揺さぶられている

10日夜、安倍首相はロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と会談した。

海産物養殖など5つの項目を対象にする北方領土での共同経済活動のロードマップ(行程表)で合意した。日本が調査団を10月初めに派遣することでも一致した。北朝鮮問題では非核化実現への連携を確認した。

両首脳の会談は5月のモスクワ以来で、第1次安倍政権時代を含めて22回目となった。

だが、ロシア側は肝心の北方領土問題解決と平和条約締結で「北方四島は自国領」との従来の主張を堅持したままである。

事実、プーチン氏は12日の東方経済フォーラムでも北方領土問題を棚上げし、安倍首相に対し「あらゆる前提条件を抜きにして、年末までに平和条約を結べないか」と投げかけた。安倍首相は領土問題の解決が前提との立場を崩していないが、むしろプーチン氏に揺さぶられている格好だ。

「思わせぶりな発言でまたごまかすのか」

今回の日露首脳会談をどう判断したらいいのか。新聞各紙の社説を読みながら考えてみよう。

まずロシア嫌いの産経新聞。9月12日付の社説(主張)で手厳しく批判している。

「プーチン氏は北方領土問題について『短期間で解決できると考えるのは稚拙だが、双方が受け入れ可能な解決策を模索する用意がある』と述べた」
「思わせぶりな発言でまたごまかすのか。早期の解決を『稚拙』と語ること自体が、問題を先送りしたい本音を示している」

産経社説は「思わせぶり」「ごまかす」などと攻撃的だが、ロシアという国の本音を捉えていて分かりやすい。