北方領土返還を本気で目指すなら実務交渉しかない

産経社説は共同経済活動のロードマップで合意したことにも批判する。

「日本は四島を不法占拠したロシアの法制度の下で活動できない。四島への『特別な制度』の導入を求めているが、ロシアは拒んでいる。活動の基盤が整わないまま行程表を作ってどうする」

活動基盤が整備されていないのに行程表に合意する。やはりプーチン氏は思わせぶりでごまかす気なのだ。

日本側の交渉にも苦言を呈する。

「そもそも、温室栽培や観光など(の5項目の共同経済活動)がなぜ四島返還に結びつくのか。明確に返還を要求し、2年前に途絶えた平和条約締結の実務交渉の再開を促すことが先決だ。

これもストレートな主張で分かりやすい。日本が北方領土返還を本気で目指すというなら実務交渉しかない。

産経新聞は「はっきり抗議すべきだ」と安倍首相を叱責する

産経社説はその後半で10日の安倍首相とプーチン氏の会談に合わせて始まった軍事演習に言及する。

「安倍首相のウラジオストク訪問は、11日からの『東方経済フォーラム』出席のためだ。だが、ロシアは同日から、日本海やオホーツク海も含む極東で兵力30万人を動員し、1981年以来、最大規模の軍事演習『ボストーク(東方)2018』を始めた。中国、モンゴル両軍も初参加した。露中両国の軍事的接近は極めて危うい」

見出しも「疑念を募らす軍事演習だ」である。

ロシアは中国やモンゴルと組んで軍事的包囲網を築き上げ、日本と米国を牽制しようとたくらんでいるのだろう。そんなロシアに安倍首相は敢然とした姿勢を示すことができたのか。大いに疑問である。

産経社説も安倍首相をこう叱責する。

「この演習が対抗勢力に想定するのは、日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)しかあり得ない。ロシアが露骨に牙をむいてきたといえよう。北方領土と千島列島は演習域外としたが、これは対日配慮に値しない。首相は会談で、北方領土や周辺でのロシア軍の動向に『注視している』と伝えた。もっと、はっきりとした言葉で抗議すべきだった」