経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「ゾゾvs三越伊勢丹と時価総額」について――。

時価総額だけならゾゾは三越伊勢丹の倍の会社に

アパレルに特化した通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイ(記事掲載当時。現在の社名はZOZO)の時価総額(発行株数×株価)が、2017年8月に1兆円を超えた。その後も増え続けて、18年2月2日現在1兆704億9800万円となっている。

一方、百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(三越伊勢丹)の時価総額は、同5440億2700万円で、約半分にすぎない。時価総額だけで比較すると、スタートトゥデイは三越伊勢丹の倍も大きな会社のように思えてしまう。

「資本金を比べると、スタートトゥデイが13億6000万円で後者は100億円。三越伊勢丹が約7倍超。売上高は、前者が763億9300万円で、後者が1兆2534億5700万円で、これも三越伊勢丹が約16倍の大きさ。純資産に至っては、前者が298億6800万円、後者が5797億8200万円で、三越伊勢丹が19.4倍です。純資産を発行株数で割る、一株当たりの純資産額は前者が94円39銭、後者が1460円.32銭で、やはり15.47倍です」(ビジネスリサーチ・ジャパン代表・鎌田正文氏)

資本金、売上高、純資産、一株当たり純資産のどれもが、スタートトゥデイより三越伊勢丹が圧倒的に大きい。が、時価総額はスタートトゥデイが三越伊勢丹の約2倍だ。なぜこんな逆転現象が起きているのか。

ゾゾは資産の割に期待値が高い

「まず、利益水準に差があります。また、株価を評価するバリュエーションが違います。株価水準を分析する指標として、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などがあります。これらの指標をみると、スタートトゥデイが高評価されています」(JPモルガン証券シニアアナリスト・村田大郎氏)

PERは、時価総額を純利益で割った数値で、純利益の何倍の株価で取引されているかをみる。同業種のPERの平均が20倍だとして、当該企業の一株当たり利益が40円だとすると、株価は800円が適正と判断できる。PERが低ければ割安、高い場合は、割高というより成長性が高く評価されているとみることができる。

「PBRは、株価を一株当たり純資産で割った数値。PBRが1倍だった場合は、一株当たりの純資産と株価が同じです。1倍以下だと、理論上は会社を解散して、株主で資産を分けたほうが得になります。日本橋三越本店などの土地資産価値の大きい三越伊勢丹はPBRが1倍前後でこれに当たります。スタートトゥデイは30倍を超えたりします。資産の割に期待値が高いからです」(鎌田氏)