経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「東京電力と特別損失」について――。

「必要なときに必要なだけのお金」を受け取れる仕組み

東日本大震災の原発事故で賠償責任を負った東京電力。あれから莫大な損害賠償費を負担しているが、なぜ破綻しないのか。

時事通信フォト=写真

背景には「必要なときに必要なだけのお金」を受け取れる仕組みがある。2011年9月、官民共同出資により設立された「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(支援機構)」の資金援助だ。

「東電が毎年支払うべき賠償金は、東電と支援機構の協議によって決まります。その分の金額を支援機構が国から交付国債というかたちで受け取り、それを現金化して東電に渡しています」(東電に詳しいアナリスト)

それは財務諸表にも表れる。

「支援機構から受け取ったお金は、17年3月期の損益計算書(PL)を見ると『特別利益』に『原賠・廃炉等支援機構資金交付金』として2942億円を計上。『特別損失』には『原子力損害賠償費』として3920億円が計上されていて、帳簿上で相殺されます。これがなかったら利益が削られ、本業で儲けても17年3月期の営業利益2586億円という黒字はまず確保できません」(公認会計士の川口宏之さん)

損害賠償費は廃炉や賠償などを含めて21兆5000億円(16年12月、経産省の見積額)に上るという。だが、「交付金の返済義務の全体像が明確でないため、貸借対照表(BS)上に負債として計上されていない」(大和証券アナリストの西川周作さん)。