全米350以上の新聞社がトランプ氏に一斉反論

「ジャーナリストは国民の敵ではない」

米トランプ大統領が自らに批判的なメディアを「フェイク(偽)ニュースを流す国民の敵だ」と呼ぶことに対し、全米の350以上の新聞社が8月16日付の社説で一斉にそう訴えた。350紙の中には2016年の大統領選挙でトランプ氏を支持したメディアもあった。

一方のトランプ氏は、同日、ツイッターに「フェイクニュース・メディアは野党だ。私たちの偉大な国にとってとても良くない。だが、われわれは勝利する」などと書き込んだ。間髪入れずに反論したところを見ると、一斉社説にかなり悔しい思いをしているのだろう。

トランプ氏は自分の言動に異議を唱えるものすべてを「国民の敵」と言い放つ。民主主義国家、アメリカの大統領とはとても思えない姿勢だ。

このメディアの動きに対し、米上院は同日、「メディアは国民の敵ではない」と宣言する決議を満場一致で採択した。米国のジャーナリズムや議会は、トランプ氏と対峙する姿勢を打ち出している。

トランプ米大統領との電話会談を終え、記者の質問に答える安倍晋三首相(中央)=8月22日夜、首相公邸前(写真=時事通信フォト)

特定の報道機関のバッシングを繰り返す安倍首相

一方、日本の状況はどうだろうか。「安倍1強」のなか、安倍政権に驕りや緩みが目立っている。だれの目にもそれは明らかだ。

安倍晋三首相とその周囲を巡っては、「忖度」から生まれるさまざまな疑惑が取り沙汰されている。だが、それを厳しく追及するメディアは一部にとどまっている。

これに対し、政権側はメディア批判を繰り返している。安倍首相は今年2月、学校法人「森友学園」問題に絡んで、国会答弁でたびたび朝日新聞を批判した。自民党参院議員のフェイスブックにも朝日新聞を「哀れ」と書き込んだ。特定の報道機関のバッシングをする様子は、トランプ氏の振る舞いに通ずるところがある。

メディアにとって欠かせないのは、権力に対する真っすぐな反骨精神と事象を正しく捉えて真実を見抜く力である。そしてこの2つの基礎となるのが、良心と良識である。良心と良識に基づき、日本のメディアも米国のように歩調をそろえるべきではないか。沙鴎一歩は日本のメディアの良心と良識に期待している。