東京医大の入院患者は不安を抱いたはずだ

東京医科大学(東京・新宿)の内部調査委員会(弁護士3人で構成)が不正入試問題で記者会見を開き、調査報告書を発表した。

8月7日に公表された報告書によると、医学部医学科の2次試験の小論文で、少なくとも2006年の入試から女子や3浪以上の男子の合格者数を抑える得点操作が繰り返されていた。

調査委は「女性差別以外の何物でもない」、「浪人生の男子の操作は背信行為だ」などと強く批判し、「文部科学省の汚職事件で在宅起訴された前理事長と前学長が主導し、寄付金や個人的な謝礼を受け取ることもあった」と指摘した。

経営の責任者と教学の責任者という大学のトップ2人が入試を利用して寄付金を集め、私腹も肥やす構図があった。考えられない事態である。

不正を不正とも思わず、許してきた東京医大。その傘下の東京医大病院は多くの患者を受け入れて、高度な医療技術を駆使した診察や手術を実施している。

患者は大丈夫なのか。私たちはどうやって病院を選べばいいのだろうか。

2018年8月7日、文部科学省に不正入試問題の内部調査結果を報告する東京医科大学の市原克彦総務部長(左奥)ら(写真=時事通信フォト)

15年前にも「一方的な記者会見」で済ませた前理事長

8月7日付の記事では「15年前と変わらない東京医大の隠蔽体質」との見出しを付け、こう書いた。

「贈賄罪、裏口入学、女子受験生差別……。どうして東京医大は不正が絶えないのだろうか」
「そこで思い出されるのが、15年前の2003年11月11日に東京医大病院(東京・西新宿)で行われた、わずか5分の記者会見である」
「記者会見は病院長と2人の副院長の計3人が出席し、医療事故について形だけの謝罪はしたが、記者の質問は受け付けず、『司直の手に委ねられており、この場での質問には一切、お答えできない』と5分で一方的に記者会見を打ち切った」

さらにこう指摘した。

「あのときの病院長が今回の文科省汚職事件で在宅起訴された前理事長なのだ」
「どうやら前理事長のようなトップの采配を許してきた問題が、東京医大にはある」

事実、内部調査報告書は、主導した前理事長と前学長だけでなく、入試委員会のメンバーも不正入試を知っていた可能性を指摘している。理事ら大学の幹部は「組織的関与はなかった」と否定する。だが、同窓生の子弟の合格依頼が多くあり、東京医大の関係者の間では周知の事実だったらしい。